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忠犬
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「清太郎」
「はいっ!」
長山の声に集団から飛び出してくる1人の男。
脇坂だ。
普段の厳つい強面は見る影もなく、ひどく慌てた様子で長山の前に出た。
「明日から弁当作らなくていい」
「え・・・・。え、は、なっ何か不味かったっすか!嫌いなもんでも入ってましたかっ!」
脇坂の実家は老舗の割烹料理屋を営んでいる。
そのため脇坂自身も料理が得意であり、レパートリーは100以上。
長山の弁当も脇坂が作っていたりする。
「違う」
「だったら何故っ!」
脇坂の顔は可哀想なくらい蒼白だった。
その様子を好い気味だとニヤニヤしながら見ている矢崎と澤城。
壁に寄りかかり傍観に徹する倉橋。
柏木は1人溜め息を溢した。
「喜劇は特等席で見るもんだろ?」
そう言った長山の顔は悪戯を思い付いた子供のそれだった。
「明日から昼は食堂で食べる。面白いもんが見られそうだしな」
「・・・・そー・・すか」
明らかに落胆し肩を落とす脇坂。
「でもずっとあの宇宙人の顔見てるのは無理だから。朝と夜は今まで通り清太郎の料理が食べたいな」
長山はそう言いながら良い笑顔を見せる。
「・・・・っ!ウッス!」
さっきまで泣きそうに顔を歪めていたのは誰かというほど今の脇坂は厳つい面に似合わず晴れやかな笑みを浮かべている。
尻尾があればぶんぶん振られているだろう。
それを周りは面白くないといった様子で見ている。
その中でも一際キツく睨み付けているのが。
「太一さま、いつまでその駄犬を甘やかすのですか」
櫻川だ。
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