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待ち人
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ゆったりとした足取りで寮の廊下を歩いていると、自室のドアの前に見知った人影が見えた。
「・・・・・碧?」
「・・・・・っ太一さま!」
櫻川は、長山に声をかけられると花が満開に咲き誇るような笑顔を浮かべ、あるはずのない尻尾をブンブン振りながら走って来た。
「どうしたの?こんなとこで」
「夕食に誘っていただきましたので」
「・・ああ、そうだったね。中にいれば良かったのに」
「太一さまのいない部屋にいても意味がないので」
苦笑しながら答える櫻川に、部屋の中にはあの五人がいるはずだ、そう考えて長山は櫻川が廊下で待っていた理由を悟った。
「それもそうだね、おいで碧」
長山が手招くとトコトコと近付いてきた。
その姿はまるで犬というよりヒヨコみたいだ。
それに口を緩め笑うと長山は一人部屋に入っていった。
残された櫻川が顔を真っ赤に染めていることなど知らずに。
部屋に入ると廊下の先から漂ってくる良い匂い。
次いで、これまた犬のように走ってくる脇坂。
その格好はというと、エプロンと手にはお玉となんとも強面の顔には似つかわしくないものだった。
「おかえりなさいっす!」
「ただいま、今日はカレーかな」
「はいっ!・・・・・嫌いでしたか?」
「まさか、清太郎の作るもので嫌いなものなんてないよ。すぐ食べられる?」
「すぐ準備しますっ!」
キッチンへと向かい駆け出そうとしていた足が、後から入って来た櫻川を目に捉えた瞬間止まった。
「・・・・・・・・なんでてめぇがいやがる」
「夕食に誘っていただいた」
「帰れ、てめぇに食わせるものなんてねぇよ」
「残念だったな、僕はお前に呼ばれたのではない。太一さまに呼んでいただいたのだ。分かったか?駄犬、お前に決定権などない」
玄関先で長山を間に挟み火花が飛び散る。
「清太郎ご飯は?」
「は?あ、でもこいつが!」
「碧は俺が呼んだんだよ、つまり俺の客だ。この意味清太郎なら分かるよね?」
「・・・・・・ウス」
長山に諭され肩を落としながらキッチンへ向かう脇坂。
少しきつく言い過ぎたか、あの駄犬は臍を曲げたら長いからな、後でアメでもやるか、なんてことを考えながら後ろで勝ち誇ったような顔をしている櫻川に声をかけた。
「碧、行くよ」
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