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転校生の優越感と生徒会の独占欲
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『お、僕は遠山葉瑠夏だ、です!仲良くしてくれよな、です!』
教室内がにわかに騒がしくなったのは、その変な敬語にではない。その容姿にたいしてだ。
男しかいないこの学校にとって遠山の容姿は、まさに砂漠の中のオアシス。
親しくしたいと誰もが思った。
だが、そんな思いは一瞬で崩れ去る。
『見た目で判断するサイテーな奴とは仲良くしたくないからな!』
教室内が凍りついた。
下手な敬語を早々に取り払った遠山の放つ言葉は正に爆音。
しかも誰かに吹き込まれたのか偏見の混じった持論を展開させる。
それは少なからず頬を染め遠山を見ていた者の熱を一気に冷めさした。
とたんに飛び交う罵声の嵐。
それは他クラスにまで聞こえるものだった。
ついで食堂での生徒会役員との接触、名前呼び、会長とのキス、その後投げ飛ばす、といった王道イベントをフルコンプした遠山の奇行はその日のうちに全校に知れ渡ることとなった。
時を同じくして親衛隊からの制裁が始まった。
だが遠山が傷つくことはなかった。
それは常に遠山の周りには生徒会がいたからだ。
生徒会は、役員の仕事を放棄し常に遠山の傍を離れず愛を囁きながら、一般生徒のみならず同じ仲間であったはずの役員同士でも牽制しあった。
誰にもやらない
葉瑠夏はオレのモノだ
恋は盲目。
「ほら、葉瑠夏こっちのお菓子もどうですか?この間美味しいと言っていたので取り寄せたんですよ」
「「あーんして?僕達が食べさせてあげる」」
「そんな奴等ほっといてこっち来いよ。俺様が食べさせてやるよ」
「・・・・は、るか・・・こっち・・・」
守られ、愛されることを当然だと思っている遠山はそれを当たり前のように受け入れる。
「本当か!あれ旨かったもんな!サンキュー静雅!てか自分で食べられるって!あ、そうだ!お前らも食べてみろよ!スッゲー旨いから!」
この学校の頂点であり、誰もが憧れ、恋い焦がれる生徒会に囲まれ遠山は終始笑顔を浮かべている。
だがふと気づいた。
何かが足りないと。
遠山は暫し顎に手を当て考える。
そんな遠山を周りの役員は訝しげに見つめる。
「・・・・・あっ!」
突然の大声に一番近くにいた宮内双子は肩をビクリと跳ねさせた。
「ど、どうしたの?葉瑠夏」
「いきなりでびっくりしたよ」
「葉瑠夏?」
「俺っ太一呼んでくるっ!」
「・・・・・あ?」
「・・・た・・・・いち・・・・?」
「太一も友達いなくて独りなんだよ!俺が一緒にいてやんなきゃいけないんだ!」
役員の制止も聞かず、遠山は一人生徒会室を飛び出した。
「・・・・長山・・・太一」
誰かが呟いた声が、遠山のいなくなった空間に苦々しく響いた。
『お前ら友達いないのか?あ、そうだ!俺が友達になってやるよ!』
『俺達はまだ学生なんだから仕事なんてしなくていいんだよ!生徒に仕事をさせるなんてここ可笑しいって!こんな学校俺が変えてやる!』
オレの天使はダレにもやらない
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