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just like a child
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渋々、柏木の後に続き教室を出た長山の後ろにちゃかり脇坂が続く。
前と後ろ、長山を挟むように歩く姿はまるで君主と家臣のようだ。
実際は飼い主と犬なのだが。
ただ無言で歩く。
先頭を行く柏木の足は真っ直ぐ寮へと向かっているようだ。
そんな無言の空間を切り裂いたのは、珍しくも柏木だった。
「・・・・お前、俺の言ったこと覚えてるか?」
「ん?」
「お前の好きなようにしてもいいが無茶だけはするなって言っただろ。ちゃんと頭の中に記憶してるか?」
それは確か阿南が来た日だったか、そんなことを言われたような気がする。
だがそんな曖昧な返事を返せば、この面倒くさい幼馴染みは何を言うか分からない。
長山はさもしっかり覚えていたとでも言うように返した。
「もちろん」
だがそんなこと柏木に通じるはずがない。
「忘れてたろ」
ズバリ言い当てられ、長山にしては珍しく顔をしかめた。
「忘れてたわけじゃないよ。思い出さなかっただけ」
「あほ、それを忘れてたつーんだよ」
柏木は振り返り、長山を見て軽く息を吐き出した。
「・・・・・昨日何があった」
「え?」
「昨日、あの猿と対面しながら、お前イライラしてただろ」
柏木の言葉に長山は一瞬目を見開き、次いで唇を吊り上げ、
「ふはっ・・・・さすが智哉だ。よく見てる」
盛大に吹き出した。
そして柏木の瞳を真っ直ぐ見つめる。
「昨日、何時ものように本校舎を歩いてた。今日はどんな手で俺を楽しませてくれるのか、ワクワクしながらな。結果は階段の上から水をぶっかけるというちんけなものだったけどな。たったそれだけのことでキレそうになってる清太郎を止めて、今度は校舎裏の木に寄りかかるようにして座った。・・・そしたら誰が来たと思う?」
長山はそこで一度言葉を切った。
「なんと生徒会長様だよ」
長山の言葉に柏木と脇坂は瞠目した。
それを見て長山は「ふははっ」と悪戯が成功した子供のように無邪気な笑みを浮かべる。
「いきなり掴みかかってきて、何を言うかと思えば、葉瑠夏に近づくな、だよ?思わず笑いそうになった・・・・・・躾のなってない犬が何を吠えているんだと」
そこまで言って長山の視線は窓の外へと向けられる。
柏木と脇坂もそれに倣うように外に目をやる。
視線の先には、今この学校を騒がせている元凶達が人目も気にせず騒いでいる姿が見えた。
それを見て長山は前髪を掻き上げる。
遮るものが無くなった瞳は愉悦に歪められていた。
「・・・・・まぁ、でもそろそろお前達のフラストレーションも振り切れそうだし、それに・・・・」
柏木ほどではないものの脇坂も長山とはそこそこ付き合いがある。
そんな二人だからこそ次に長山が発するであろう言葉が容易に想像つく。
「俺も飽きてきたしな」
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