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不穏
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そして今日は球技大会。
この学校には体育祭はない。
その代わり期末試験が終わってすぐ球技大会が行われるのだ。
やっと勉強から解放されて、もうすぐ夏休みー!と盛り上がっている時になんで汗だくになって運動なんてしなければいけないのか。
なんでも何年か前の生徒会の中に運動部の主将がいたらしく、部活禁止となるテスト期間中、ストレスが溜まりに溜まって、終わった途端、うぉぉぉ!!汗水流して青春してぇぇ!!!と叫んだとか叫んでないとか。そんなこんなで期末か終わったばかりのこの時期に一般生徒にはけしてありがたくもなんともないが、球技大会が盛大に催されるようになったのだ。
とはいえ、生徒会は相も変わらず遠山にかまけて仕事などいっさいしないので準備などは全て風紀にまわってくる。
風紀の面々は、行事の企画に進行、見回りまで全てを分担して行わなければならない。
風紀委員もそこまで人数がいるわけではない。
猫の手も借りたい、今の風紀は正にそれだ。
「委員長、競技は滞りなく進んでいます」
「そうか・・・・・・・・・・よし、そこで暫く待機。何かあれば直ぐに知らせろ」
鳴海は片手に競技の進行表を、もう片手にはトランシーバーを持ち電波の向こうに指示を飛ばす。
「・・・・・ふぅ」
気丈に振る舞ってはいるが、その顔にはどこか疲労の色が見える。
「委員長、疲れているのでしたら少し休まれてはどうですか。ここまでくれば後はなんとかなんとかなりますから」
そう言う委員にも鳴海は首を横に振る。
「・・・・いや、大丈夫だ」
声にはいつもの覇気がないし、顔色だって優れない。なのにこの人は何故こんなに頑張るのだろう。
頭に浮かんだ疑問を素直に口にした。
「リコールしないんですか?」
それは至極真っ当な意見だった。
今の生徒会は、一人の生徒にかまけて執務を放棄し校内を混乱させている。
それにも関わらず生徒会役員の特権だけは使用しているのだからリコールの条件は揃っている。
今ならリコールに必要な一般生徒3分の2の賛成も得られるだろう。
にも関わらずこの人は動こうとはしない。
それは何故?
休みを返上してまで風紀と生徒会の仕事をこなし、こんな疲れた顔をして、この人に何が残るのだろう。
頭の中が疑問で埋め尽くされる。
「・・・・・・・リコールか。別に俺も考えなかったわけじゃない。何故俺があいつらの分まで仕事を請け負わなければならないのか、そんな理由がどこにある。だがあいつが動かないのに俺が動けるわけがない」
「・・・・・・・え?」
最後の一文はあまりにも小さな声だったため聞き取ることができなかった。
聞き返した声にも何も答えることはせず、鳴海は再び電波の向こうと会話を始めた。
この人が大丈夫といったら大丈夫なんだろう
俺達はただこの人に付いていけば良い
「・・・・・・なに?」
突然低くなった声色に周りの空気が張り詰める。
「それで今どこだ。・・・・・・・・・分かった。直ぐに行く」
「何か問題が?」
「ここの指揮はお前に任せる」
「人手は?」
「いらん」
鳴海にしては珍しく慌てた様子で指示を出すとグラウンドとは反対側へと足早に走っていく。
その姿に呆気にとられ、暫く呆然としていたが甲高い笛の音に我にかえった。
どうやら試合が終わったらしい。
えっと次は・・・・・鳴海から渡された進行表に目を落とし、ふと鳴海が消えた方に目をやる。
いったい何があったんだろう
あの委員長が慌てるんだ
きっと大変なことが起こったんだろう
でも
たとえ何が起ころうと、あの人の辛労がこれ以上増えなければいい
とりあえず今は、あの人から任せられた仕事を真っ当しよう
我らが委員長に平穏が訪れるまで
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