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まず一つ
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鳴海は用具室の戸を開け、中の様子に戦慄した。
涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら地に手をつき泣き叫んでいる者達。それも一人や二人ではない。
「・・・違う・・・・違う・・・・あの方達は違う」
「ボク、達が・・・・お慕いしてっ・・・いたのは・・・・・」
「・・・ひぅ・・・・ぅえ"っ、ぅ"ー・・・・あ"ーーー・・・」
なんだ、これは・・・・・まるで地獄絵図じゃないか
そんな中、鳴海は真ん中で一人佇む長山の姿をとらえ、息を飲んだ。
顔に笑顔を浮かべ、嬉々とした様子でその様子を眺め、綺麗な弧を描いている唇からは時々笑い声が漏れ聞こえる。
鳴海の背中をゾクリとしたものが這い上がる。
―― まるで、あの時の・・・・・ ――
ふいに長山の顔がゆっくりと動き、漆黒の瞳と目が合った。
眼鏡越しにも関わらずはっきり見えたソレは、鳴海の姿をその瞳に映すと愉しげに細められた。
それに今度はドクリと心臓が脈打ち、まるで鷲掴みにされているような錯覚に陥り、ワイシャツの上からギュとシワができるくらい強く左胸を押さえた。
ザッ、ザッ
ゆるりとした動作で長山の足が鳴海に向けられる。
瞳は逸らされないまま徐々に近づく距離。
まるで金縛りにあったかのように固まり動かない身体。
心臓がドクリドクリと早鐘を打つ。
頭の奥で警告音が鳴り響く。
唯一自由に動く眼球は長山から目を離さないよう忙しなく動き続ける。
それは一種の防衛本能。
蛇に睨まれた蛙
鳴海は自分が小動物になってしまったような気になった。
自分より身体が小さいはずの長山から発せられる威圧感。
喰われる
だが長山の足は止まることなく、鳴海の横を通りすぎ出口へと真っ直ぐ進んでいく。その途中、すれ違い様発せられた言葉に目を見開いた。
―― 堕ちた ――
バッと振り返り見た長山の姿は外から入り込んできた光に溶けて消えた。
それでも鳴海の身体は鉛になったように動くことができなかった。
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