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過去 ― 日常 ―
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バタバタバタ外から幾つもの足音がする。
「委員長!!」
「・・・・・っ!これは?」
委員達は中の様子に戸惑い言葉をなくした。
「・・・・・後のことはお前達に任せる」
「え、ぁ、ちょ、委員長!?」
外に出て辺りを見渡すが既に長山の姿はなかった。
鳴海は小さく息を吐くと空を見上げた。
先程までは青色が広がっていた空は厚い雲に覆われ今にも雨が降ってきそうだ。
進行を急がせなければ
歩みを早めた鳴海はふと立ち止まりもう一度空を見上げた。
頭を掠める懐かしい記憶。
この空はあの日のことを鮮明に思い出させる。
長山に会ったあの日のことを・・・・・。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
綺羅びやかなネオンが輝き、夜でも人が途絶えることがない。ここは眠らない街として有名だった。
そして惹かれるように集まる若者達。
この街は行き場のない若者達が行き着く場所としても有名になっていた。
メインストリートから外れ、脇道に入ったところにある一軒のバー。
深夜2時を過ぎたにも関わらず、そこは連日連夜大勢の若者達が集まる、あるチームの溜まり場と化していた。
皆、年の頃は10代後半~20代前半。
幾つもの塊を作り、トランプやらダーツやらと思い思いの時間を過ごし楽しんでいる。
カランカラン♪
そこへ小綺麗な鐘の音を響かせ4人の若者達が入ってきた。
すると店内にいた者達は一斉に立ち上がりその方向に向かって頭を下げた。
「しゃっす!」
「お疲れ様です!」
その声にも臆することなく4人は店内を進みカウンター席へと腰を下ろす。
「マスターいつもの」
席へ着くなり、その中で一番年上だろう青年が店の奥の初老の男性に声をかける。
「俺にもいつものー」
次に声を上げたのはまだ10代であろう少年。
元気に手を上げてマスターと呼ばれた男性に声をかける。
男性はカウンターの奥で、手際よく手を動かし2人の目の前に其々の品を置いた。
しかし、少年は目の前に置かれた物を見て目を丸くする。
最初に声をかけた青年の前には赤紫色のカクテル。
少年の目の前には・・・・・。
「・・・・・・・オレンジジュース?」
カシスオレンジだと言われればまだ納得できるが、これはどこからどう見てもオレンジジュースだ。
少年の眉間にみるみる皺が刻まれる。
「なんで俺だけオレンジジュースなんだよ!」
「残り物だ」
それにマスターはなんでもないように答える。
「いやいやいや意味分かんないから!なんで俺が残り物のジュースで、カズさんがカクテルなんだよ!」
少年は隣で優雅にグラスを傾けている青年――カズを指差し文句を言う。
「俺は大人だからだよ。悔しかったらお前も早く大人になるんだな、コウ」
ニヒルな笑みを浮かべるカズは一言で言えばイケメンで少年より少しだけ大人だった。
対してコウと呼ばれた少年は、幼い顔立ちであどけなさの残る子供。口で勝てるはずがない。
ぐぬぬぬぬぬ、と負けを認めることもできず、文句も言えないコウは顔を赤くして拳を握り締めることしかできなかった。
「お前も早くキールが似合う男になれよ」
グラスに入った赤紫色の液体――キールを揺らしながらカズが笑う。
この人には口でも喧嘩でも勝つことはできない。
それでも、いつか、いつか必ず。
「絶対いつかカズさんが吃驚するくらいカッコ良くて強い男になってみせるからな!」
決意新たに叫ぶ声が店内に響き渡った。
そのバカでかい声に周りからヤジが飛ぶ。
そんなことあるわけねぇだろ!夢見てんじゃねぇよ!
うるせぇー!!なるったらなるんだよ!
余計賑わしくなった店内にカズは一人カウンターに座りながら変わらず静かにキールを飲み、
「できるもんならな」
皆の中心で騒ぐコウの姿を慈愛に満ちた瞳で見つめていた。
チーム "BLACK"
総長――カズを筆頭に50人余りからなるこの街最強の不良グループだ。
そこでコウ――鳴海公平は特効隊長として常にカズの側に身を置き、喧嘩の際には真ん中で敵対勢力と激しい殴りあいを繰り広げていた。
鳴海公平15歳、運命を変える出会いが静かに近づいていた。
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