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過去 ― 異変 ―
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それは突然やってきた。
いつものように溜まり場のバーで騒いでいるとバァンと勢いよく開けられたドア。
雪崩れ込むように入ってくる人影。
「・・・・・っ出た!毒蝶だっ!」
瞬間、室内に緊張が走る。
「それは間違いないのか?」
周りがざわめき立つ中、カズは一人冷静に問いかける。
「ああっ!間違いない!!自分は毒蝶だって確かに言ったんだ!!!」
「被害は?」
「わ、わからない・・・背後からいきなりヤられて・・・・・さ、叫び声も聞こえたけど・・・・俺・・・こわ・・・怖くて逃げて来ちまって・・・・・・っ!!!」
そう言った青年は頭を抱え踞りガクガクと震えだす。
仲間を見捨てて逃げた卑怯者と罵られるのが、仲間から見放されることが、恐ろしく怖い。
だがこのチームにはそんな奴一人もいない。
どんな下っ端であっても仲間を大切にするのが総長のカズだからだ。
そんなカズを慕う者達が集まり "BLACK" はここまで大きくなったのだ。
今なお体を丸め震えている青年にカズは落ち着いて声をかける。
「誰もお前を責めたりしない。自分の身を守るのは一番大事なことだ。・・・・・だから顔を上げろ」
カズの言葉に青年は恐る恐る顔を上げた。
その顔は情けなく歪んでいたが、カズの顔を視界に入れるとほっと息を吐き出し安心したような顔になった。
「・・・あ、ありがとう・・・ございます」
「さてと・・・お前らどうしようか?」
カズはゆっくりと周りを見渡した。
周りは興奮を押さえきれないというようにカズを見る。
「仲間が傷つけられたんだ。このまま黙って見ているお前らじゃないよな?」
カズが言葉を発する度、それに比例するように周りが熱気に包まれる。
「毒蝶なんて大それた名前だが、毒がなければそれは花の蜜を吸うただの蝶だ。羽をもいでしまえばそれは宙を舞うこともできない。そんなもの怖くもなんともない。そうだろぉ?」
ボルテージは最高潮。
テンションはMAX。
「狩るぞ、毒蝶」
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
雄叫びが店内に木霊する。
コウも久しぶりに暴れられることに興奮していた。
「よっしゃゃゃ!!カズさん俺も行きます!」
「いや、コウお前は残れ」
「・・・え?なんでっすか!?」
「毒蝶は噂によれば一人で行動している。たかが一人のために全員で行くことはない。行くのは俺を含め10人ほどでいい」
「なら余計に!」
「このバーは俺達にとっては特別な場所だ。お前にとってもそうだろ?だからお前にはここを守っていてほしい。俺達がまたここに戻って来れるように。なにこんなこと言ってるけど負ける気なんか更々ないから」
―― そんじゃ頼むな ――
真剣な眼差しに何も言えなかった。
言いたいことは山ほどある。
だが口を開いても空気が漏れるだけで、音としての意味をなさない。
闇夜に紛れ消える背中に妙な胸騒ぎをおぼえた。
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