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そして今に繋がる
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そのすぐ後、事件を知ったカズの両親がどこか遠く離れた土地へカズを連れていった。
なんでもカズはそこそこ名の知れた大企業の息子だったらしい。
大学を卒業するまでは自分の好きなように生きてもいい、その代わり大学を卒業したら会社を継ぐための勉強をすること、それがカズがBLACKの総長を続けるための条件だった。
カズを失ったチームはそのまま解散。
それでなくとも毒蝶にヤられたダメージは大きかった。
コウもまたカズを通して繋がっていたあのバーには寄り付かなくなった。
今更行く場所などなく、意味もなく夜の街を徘徊した。
その時々で喧嘩を売られ、やり場のない気持ちを抑えるためにそれら全てを買った。
それでもコウの中で燻る虚しさはなくなることはなかった。
それから半年、コウは親の薦めでなんとなく選んだ下界から隔離された山奥の学校に入学した。
最初その話を聞かされた時には、" 今まで俺がなにやろうと放っといた癖にいきなり親面すんな "と気分を害したが、喧嘩を売られるのも買うのにも疲れていたコウはそれを承諾した。
新しい環境にも慣れ、新しいコミュニティを持ち、コウはあの頃の誰も知らない鳴海公平になった。
かといって性格そのものがそう簡単に変わるはずもなく、イライラして手が出そうになったことも何度かあるが、そこはなんとか理性で抑えこんだ。
そんな中、親しくしている先輩から風紀委員会に入らないかと誘いを受けた。
別段やりたいこともなく暇を持て余していた鳴海はそれに了承の返事を返した。
それからまた半年、鳴海は学年が一つ上がり新入生を迎える立場になっていた。
校長だの理事長だの来賓の言葉を欠伸を噛み殺しながら椅子に座って聞き流していた鳴海はただぼんやりと前の方で椅子に座って緊張しているだろう一年生の背中を眺めていた。
そして漸く式が終わったらしい。
一年生達が列をなし退場する。
上級生の間を流れるように歩くその姿を目で追う。
「・・・・・・・っ!」
身動きした瞬間ガタリと椅子が大きな音を立て、隣から訝しげな視線を向けられるがそんなものに構っていられない。
一年生の列に混じった漆黒の髪。
黒い髪など珍しくもないし、長い前髪で顔もはっきりとは分からないが直感した。
間違いない、あの時のあいつだ
驚き唖然と見つめていたら目が合った。
漆黒の瞳が見開かれる。
しかしそれもほんの一瞬のことであった。
擦れ違い様にんまりと口許が歪められる。
弾かれたようにそれを追うも既に他と同化しておりその姿を捕らえることはできなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ぽつり鼻の頭を掠めたものに意識が思考の渦から浮上する。
雨を降らす空を見上げ眉を顰める。
木々の間を抜け、グラウンドにいる委員に声をかけた。
「どこまで進んでいる」
「後2試合です」
「進行を速めさせろ。一雨くるぞ」
「はい」
目の前で行われている競技を眺めながら鳴海は先程のことを思い出していた。
一見無害そうな容姿で、異様な光景の中立っていたソレ。
けして無害などではない。
内に秘めた凶悪な本性。
得体の知れないモノを相手にするかのような恐怖心があるにも関わらず、心のどこかで楽しみにしている自分がいることに鳴海は気づいた。
彼奴ならこのつまらない日常を壊してくれるのではないか。
たぶん彼奴は毒蝶の正体を知っている。
だからといって今更敵を討ちたいなどとは思っていないけれども。
親衛隊についてはあいつらが上手く処理してくれるだろう。
問題はその後だ。
きっと根掘り葉掘り聞かれることだろう。
まだ奴のことを話す気はない。
鳴海でさえあれが何者なのかよく分かっていないのだ。
説明できるはずがない。
それをどう躱したものか。
面倒くさくなるこれからのことを考えて大きく息を吐き出した。
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