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来室者
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それから10分、教室のドアが静かに開けられた。
軽やかな声と、軽やかな足取りで入ってきた人物に視線が集中する。
「太ちゃん来たよ。太ちゃんからメールしてくるなんて滅多にないからびっくりしちゃった~」
「・・・・柚季の方が早かったね」
「え?」
阿南はニッコリと華やかな笑みを浮かべていたが、長山のニッコリとしながらも小さく呟かれた言葉に疑問の声を漏らした。
すると再び、今度は派手な音を立ててドアが開かれた。
「太一さま!お呼びでしょうか!」
縁にぶつける勢いでドアを開け真っ直ぐ長山の元へ歩こうとしたが、その前に立つ阿南に気付くとぴたりと足を止めた。
「・・・・・何故お前がそこにいる」
激情を抑えて言う櫻川に阿南は一瞬呆気にとられ、しかしすぐに机に頬杖をつき自分達の様子を楽しげに眺めている長山を視界に入れると全てを悟った。
「太ちゃんの仕業?」
「ん?なんのこと?」
「別にあっちゃんはいいけど、僕を巻き込むのは勘弁してよね。太ちゃんが楽しいことは僕も楽しいけど、自分が巻き込まれるのはイヤ。僕は太ちゃんと一緒に馬鹿な人を指差して笑っていたいの」
「ははっ、柚季って本当にイイ性格してるよね」
「太ちゃんほどじゃないけどね」
ニコニコ笑いながら話す二人を状況が飲み込めない櫻川は暫く黙って見つめていたが、徐々に頭が冷静さを取り戻してくると今度はムカムカした感情が頭の中を埋め尽くした。
止まっていた足の動きを再開させる。
「太一さま、これはどうゆうことでしょうか?」
「あっちゃんまだ解んないの?これは~・・・」
「阿南には聞いていない」
櫻川にそう言われ阿南は幼子のように頬っぺたを膨らませた。
「ちょっとしたゲームさ、暇潰しのな」
「ゲーム、ですか?それは・・・・」
櫻川の質問に一から十まで丁寧に説明してやるほど長山は優しい性格ではない。
「親衛隊の様子はどう?」
「え、」
脈略もなく問われたことに櫻川は何も返すことができず、その意味を理解するより先に阿南の口が開いた。
「未来ちゃんが喚き散らしてたよ。幹部連中が皆虫の息で使い物にならないって」
「・・・・あ、そういえば栗原もそんなことを言っていたような。栗原は隊員達のことをただ心配しているだけのようでしたけど」
「太ちゃんさ~、何したの?」
「別に俺は何もしてないよ。あっちが勝手に落ちただけ。現実を受け入れきれずにな。人間の心はひどく脆いから」
楽しげに瞳を細め、口許を吊り上げ笑みを深くする。
「だからこそ落ちる瞬間を見るのは面白いんだ」
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