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夏の陽射しの下
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長山達が待ち合わせ場所に着いたのは約束の時間から5分ほど過ぎた頃。
だがそこに2人の姿はなく。
結局2人が姿を現したのは、それから30分後のことだった。
両手に持ちきれないほどの紙袋を抱え上機嫌でこちらに向かって歩いてくる最中発せられたのは、
「ごめんねー」
そんな、空気よりも軽い謝罪ともとれない言葉だった。
帰りの車の中でも、あれは可愛かっただの、あれはもう少し安ければよかっただの、何をそんなに話すことがあるのかと思うほど2人の会話は途切れることはない。
その会話を後部座席で聞き流しながら相も変わらず窓の外を流れる景色をただ眺め、時々振られる言葉に適当な言葉を返す。
家の前に着くと長山と柏木だけ降ろされた。
なんでもこれから新しく出来たオシャレなカフェに行くのだとか。
あれだけ歩き回って元気だな、と女の人のパワーを肌で感じながら走り去る車を見送った。
遅くならないと言っていたから夕食までには帰ってくるのだろう。
さてどうしようか
青々と眼前に広がる空を見上げる。
今はだいたい3時過ぎといったところだろう。
まだまだ早く、家にいるのは勿体無いような気がする。・・・・かと言って地元に帰ってきたからと特別行きたい場所も会いたい人達もいないのだけれど。
ただこの街にも長山の犬はいる。
だがあれらは長山の飼い犬になりたがっている自称犬の只の野良犬だけど。
まぁ、その野良犬達に会うのも悪くないか
柏木はコッチに帰ってきてから掛けられなくなった眼鏡越しではない夏の陽射しに照らされキラキラ輝く漆黒の瞳を見つめ大きく息を吸い込んだ。
いつまで経っても色褪せることのないそれは、その下にある唇と同じようにいつだって綺麗な弧を描きだす。
「智哉、今夜集合かけといて」
そしてまた柏木はその瞳に逆らえない。
違う。逆らわない、のではない。逆らう気が起きないのだ。この瞳でお願いされるとどんな些細なことだって叶えてやりたくなる。
瞳を細め、唇がつり上がり、喉が愉しげな音を発するのであれば。
なんだってする。
「ああ、分かった」
長山の言葉に対して、頭では色々考えているにも関わらず、柏木の答えはたった一言だった。
それでも長山の瞳は柏木の言葉を聞いてより細く綺麗な円を描いているのだから気持ちは伝わっているのだろう。
日中の暑い最中聞こえるのは、プール帰りのはしゃぐ小学生の声と、長い歳月をかけて地中で命を繋ぎ漸く出られた地上でその短い命を儚く散らす蝉の鳴く音のみ。
体にまとわりつく夏特有のゆだるような暑さ。
身体中から噴き出す汗で肌に張り付くTシャツが不快感を感じさせるほどの暑さの中、特別会話といった会話もなく2人はただそこに立っていた。
夏の象徴である太陽は烈日とその存在を主張し続ける。
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