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起爆剤
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ド派手な色で輝くネオン。
店の前で安っぽい言葉で客を呼び込む者。
自分の体を最大限利用し男を誘惑する者。
怪しいクスリを売る者、買う者。
ストレスの捌け口として弱者を傷つける者。
法に触れないギリギリを愉しむ者。
ここは享楽者達が多く集う場所。
一夜で何百万という大金が動く場所。
裏で取り仕切るのは大物政治家ともパイプを持つヤクザ。
だから警察も迂闊に手を出すことはできない。
そんな無法地帯に今宵無法者達が足を踏み入れる。
全身を黒っぽい服で覆い、フードを被っているため顔は判別できない。
そんな彼等をギラギラと見つめる複数の目。
「あいっかわらず薄汚いよねココ。俺ココ好きじゃな~い」
「同感、てかなんで今更ココ?」
「自分の目で確かめたかったんだよ」
「俺の集めた情報だけじゃ足りなかった?」
「プリン頭の集めた情報なんて腹の足しにもならないだろが」
「駄犬は黙れ」
「・・・・・・お前ら本当に飽きねぇな」
「学習能力皆無だね」
しかしそんなもの気にも留めずその中を歩きながら普通に会話を続ける。
「真也の情報が足りなかったとかそんな話じゃない。実際に見てはじめて解ることだってたくさんあるんだよ。・・・・・・ココはあの頃と何も変わっちゃいない」
立ち止まり顔を上げる。
ひしめき合うようにしてそびえ立つ雑居ビル。
煩いくらいに光輝くネオンの光によって、そこにあるはずの空を見ることは叶わない。
まるでそこだけが世界の全てのように、ありとあらゆる人種が入り雑じり共存する。
いや共存なんて生易しいものじゃない。
喰うか喰われるか。
壊すか壊されるか。
そこは弱肉強食の世界。
そこに立つ彼等ははたしてどちら側か。
彼等はメインストリートから離れ寂れた路地へと入っていく。
路地を抜けると少しだけ拓けた場所に出た。
「あ"ァ誰だてめぇら」
そこにいたのはこれまた人相の悪い、如何にもといった感じの少年達。
周りを雑居ビルに囲まれたそこは空気の流れが遮断されているため紫煙が漂い辺り一面靄がかかったように白っぽく空気が重い。
おまけに吸う空気全てが煙たく息がしずらい。
そんな中、少年達は所謂ヤンキー座りで煙草を地面に擦り付け鋭い目付きで睨み付けてくる。
人一人殺せてしまいそうな目付きだが、今更そんなもので怯む彼ではない。
1歩前に出ると徐に口を開いた。
「煙草止めた方がいいよ。身体に悪い」
「ひゃははは、なんだそれ!」
「身体に悪い?そんなん知るかよ!」
「ははっマジ受けるっ!良い子ちゃんかよ。子供がこんなとこに来てんじゃねぇよ」
「ガキはお家に帰っておねんねの時間ですよ~。あはははっ」
頭の悪そうな笑い声が響き渡る。
それは明らかに嘲笑を含んだもの。
それでも彼は言葉を続ける。
「煙草吸ってたら背伸びないよ」
「ひゃっはっだいじょ~ぶすでに俺ら君より大きいから」
「違いねぇ!ほら早く家に帰ってママのオッパイでも吸ってろよ」
ギャハハハハ
下品な笑いが木霊する。
「・・・・・・・そう、お前ら一度地獄を見てみるか?」
急に低く不穏な空気を纒だした彼に、それまで腹を抱え笑い転げていた少年達は一様に口を噤んだ。
彼は右手を顔の前まで持ち上げると軽く拳を作った。
フードによって表情は分からないが、唯一見える口許は愉しげに歪められている。
空気を弾くようにして中指を親指の付け根部分に振り下ろす。
その瞬間パチンと響く乾いた音。
まるで死刑執行の合図のようなソレ。
少年達の目には支配者のようにそこに立つ黒いフードを被った彼の一連の行動がまるでスローモーションのようにゆっくりと見えた。
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