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タイムロス
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先程までの乱闘騒ぎが嘘のように6人は静かに歩いていた。
全身を黒で覆ったその姿はこの街の中でさえ異様だった。
そんな彼等をこの街の住人が放っておく筈がない。
最後尾を歩く澤城の肩を強く叩く男が1人。
「おい、兄ちゃんらちょっと俺らと遊んでいけよ」
「あ~?お兄さん達俺を楽しませてくれるの~?」
フードの下から覗く嬉々とした瞳。
それに男は舌舐めずりをすると再度声を発するべく
口を開いた。
しかしそれを止めたのは静かな、それでいて凛とした声だった。
「―― 圭介。そんなの相手にするな」
男はそこではじめて長身に埋もれた少年(まさに少年という表現がしっくりくる)に気がついた。
「なんだ~坊やも遊んでほしいのか?でもそれはまた今度な。子供がこんなとこにいないで、早くママのとこに帰りなさいな」
そう揶揄された長山はフードの下、うっすら笑うとゆったりとした足取りで男に近づいていく。
近づけば近づくほど男との身長差は顕著だった。
それにまた男は目を細め嘲笑う。
「なんだ、どうした?遊んでほしいのか?でも俺ら子供と遊ぶ趣味はないんだよなー」
なー?、と仲間に同意を求め馬鹿にしたように笑いあう。
それでも長山は歩みを止めない。
そればかりか・・・・・・。
「・・・・いっ!!いだだだだっ!!」
「おいっ!」
「なんだっ?どうした!?」
「足がっ!足がぁー!!」
「あ、足?」
男の仲間達が視線を下へ移すと痛みに悶絶している男の足は長山の足の下敷きになっていた。
「なっ!てめぇ!」
男は夏特有の素足にサンダルというスタイルだった。対して長山は動きやすさ重視のスニーカー。
しかも長山が踏んでいるのは足の甲ではなく小指。そこに全体重を乗せている。
踏まれた方は痛いどころの騒ぎではないだろう。
逆上した男の仲間は長山に殴りかかる。
その瞬間長山の足は男の上から退かされた。
突然無くなった圧力にこの状況から逃れようともがいていた男の体は重力に逆らうことなく後ろに傾く。
その先には長山に拳を叩き込もうとしていた男の仲間。咄嗟のことに躱せるはずもなく二人仲良く背中から地面に突っ伏した。
「・・・ぐっ!」
「あぐっ・・・!」
痛みに悶える彼等の頭上から聞こえるのは中性的なテノールボイス。
「俺達も暇じゃないんだよね。だからこのままここでお兄さん達と遊ぶことはできないの。すっごく残念だけどね」
地面に蹲り顔を上げた二人からはフードの下の顔は逆光になって見えない。
それが不気味さをさらに煽る。
長山は何も言わず背を向け歩きだした。
他の5人はその後を当然のように付いていく。
その姿はまるで飼い主に従順な犬のよう。
「お、おいもしかしてあいつら・・・・」
「あ、ああ間違いない ―――― だ」
「も、どって来たのか、この街に・・・・・」
彼等の後を追うように発せられた男達の確信めいた呟きは喧騒に紛れ夜の闇に掻き消された。
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