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スパ友の俺
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俺のニコチン摂取ポジション、略してニコポジは、三階の渡り廊下の先にある。外の螺旋階段に繋がる施錠が忘れられた扉をギイッと開けると、春の日差しが顔面に突き刺さる。それがまぶしくて思わず目を細めた。
「あ〜!!!鳩のうんこ」
ベスポジは大して広くないうえに、屋根があるわけでもない。ただの屋外の階段やから、いつも俺が座ってるとこに鳩のうんこが落ちてる。めっちゃ嫌やわー!!
まあ雨が降ったら流れるやろ、それまでは立ってスパらなアカンなー。そんなことを思いながら拉致ってきた後藤くん(仮)を引っ張ってた腕を離した。
壁にもたれてケツポケットからタバコを取り出す俺と、その俺の仕草をじっと俺を見てくるだけの後藤くん(仮)。見られてばっかやったらなんかアレやからなんとなしに後藤くん(仮)の方をみたら、ちょっと疑問気に「なぁ、ここですんの?」って聞いてきた。やんの?ってなにをやんの?あ、タバコすんの?ってこと?
「おおー、すんでー」
「…はあ、やっぱそうか。でもここ、危ないやろ。落下とかしたらどうすんねん」
こき、って首を鳴らす後藤くん(仮)。その音は俺のタバコに火つける音でもみ消された。
ここ、危ないか?落下なんか身乗り出したりせぇへんかったら絶対せんやろしなぁ、なんなん、後藤くん(仮)は高所恐怖症かなんかなん?それやったらここまで連れてきてもーたんカワイソやったかな、裏庭でもよかったんやけど裏庭は後輩ら溜まってるしな〜。
「激しく暴れたりせんかぎり大丈夫やって!なっ!」
励ますように後藤くん(仮)の肩をぽん!と叩いた。ほな後藤くん(仮)は大げさなぐらいビクッてなったから、予想は確信になった。…高所恐怖症、か…。かわいそうに…大変やろな。だって高いとこぜんぶ怖いんやろ?そんなん、去年の修学旅行の東京スカイツリー、ちゃんと登れたんかな…。もしかして怖くて下見られへんかったんちゃうかな…。あ、なんか泣けてくるわ。
「後藤くん大変やったなぁ、大丈夫やで、これからは高くないとこ連れて行くからな!今日だけは我慢して、担任にホームルームまでに帰るっていうてんねん」
後藤くん(仮)の背中をさすさすしたると、後藤くん(仮)はこの世のなにも信じられへんって顔をして俺の手を振り払う。
「なあ、ちょっとまって。…え?なんで俺ここに連れてこられたん」
「ん?自分タバコ、吸いそうな顔してたから。スパ友欲しさについ」
「……………。」
素直な感想をいうただけやのに、後藤くん(仮)はまたこの世のなにも信じられへんって顔して小さい声で「まじか」って呟いた。
「後藤くん?」
「…さっきから思ってたけど後藤って誰なん?!俺、上田やねんけど!」
「嘘や〜だって顔後藤やもん!」
「顔後藤ってなに?!」
「そのまんまやん、え、うえだくんって植えるに田んぼ?」
「いや、普通の上に田んぼ」
「むっっっっっちゃ普通やし似合ってないな!?」
「苗字に似合う似合わんとかないやろ!もーーやってられへんわ…」
俺のタバコが半分ぐらい灰になったころ、後藤くん(仮)もとい上田くんがやってられへんとかいいながらケツポケットからタバコとりだして「ライター貸せや」っていうてきた。なんでライター持ってへんねん、って思ったけどまあここまで拉致ったしな、って思ってコンビニで買うた百円ライターを手渡す。
もくもくもく、しろい煙が風に乗って消えていくんを見ながらタバコ吸うんが日課やったけど、今日はスパ友がおるからぼちぼち喋れて楽しいわ。
「ここ、先生らにバレること絶対ないからオススメやで。後輩も知らんから、タバコ吸うとき付き合ってや」
「や、俺普段学校で吸わんし」
「えーそうなん?なんで?」
「真面目やからな」
「真面目な奴はケツからタバコ出して俺にライター貸せやとか言わん!」
「まあ、今日見たことは内緒にしといて」
「ってか後藤くんセッタかー!キッツイの吸ってんなー!」
「え、なあ話聞いてた?ほんで俺上田やってば」
「だって上田って顔ちゃうし俺的に後藤くんやしもう後藤くんでよくない? 」
「よくない」
始業式鬼ダルかったけど、後藤くんとはスパ友になれたし、今日はいい日やなぁ。…って思ってたんもつかの間、ホームルームまでに帰るとか担任にいうたことすっかりさっぱり忘れてて、あとでむっちゃ怒られた。ほんまこわこわまん。
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