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Episode8 『匿い』 ②
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「……お前、誰?」
王生は村上に初めて目を向けた。
その瞳はとても鋭く冷ややかである。
声はとても気怠げで、わざわざ聞いてあげましたと言わんばかりだ。
「…クソが…今はお前と関わってる場合じゃねぇんだよ」
村上は拳を構える。
高嶺の絶対王者という肩書きを持ち、極道の跡取り息子となると、
流石に相手が悪い。
しかし、ここで尻尾を巻いて逃げる訳にも譲る訳にもいかない。
ーーモタモタしていたら奴らが来る。霧間を攫いに。
「あぁ。お前、漆戸組に飼われてる下っぱだろ」
自分に向けて拳を構えた村上を一瞥し、王生の口角が僅かに上がる。
「漆戸組の変態ジジイは、そこの猫のケツを追いかけ回してるって噂、本当のようだな」
「…猫じゃないんだけど」
すかさず霧間が口を挟む。
「だったらどうした…!?テメェが出る幕じゃねぇんだよ!!!
さっさと失せろ!!」
村上は焦っていた。早くこの場から霧間を連れて逃げなければならない。
王生の言う通り漆戸組の組長は、あの冬の一件から、いや、それ以前から霧間に執着し、追いかけ回しているのだ。
村上は霧間を守る為に自ら漆戸組に入り、鍛え、裏を探り、霧間に魔の手が及ぶ前に逃す機会を伺っていた。それが今この瞬間なのだ。
しかし、予想外の大きな障害が現れた。
ーー王生の目的が分からない。いつの間に霧間と関係が?
村上は拳を大きく振り上げ、王生の顔面を狙う。
「格の違いも分からない、下っぱもいいとこだ」
王生は真正面から村上の拳を受け止め、言葉を吐き捨てた。
「お前如きが、あいつを守れるとでも思ってんの?」
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