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Episode2 『不登校の登校日』 ②
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高嶺桜高校は、その名称に桜が付いている通り、付近には多くの桜が植えられている。
春には見事な満開を見せ、その美しい景観は地元の人間によく知られていた。
校門までの道のりは長い桜並木となっており、風が吹くと桜吹雪が起こり、そこら一帯は薄桃色の絨毯となる。
それもまた、春の興の一つである。
先ほどからあくびを連発しながら、銀髪の男、王生は高校への道のりである長い桜並木を進んでいた。
すると、遥か前方から、この桜景色には似つかわしくない馬鹿そうなやり取りが目に入った。
「か、か、返して…くだっ…返してください!!!」
「はぁ?1年坊主が調子乗ってんじゃねーぞぉ?先輩に金渡すくらい挨拶だと思いな」
「つぅか、これだけ?」
誰がどう見てもカツアゲだ。
加害者も被害者も両方高嶺桜の制服を着ている。
しかも、可哀想なことに不良のターゲットは、今日入学式を迎えている1年生だ。
眼鏡をかけた、いかにも真面目そうな少年。
そして、
――弱そう。
王生は手を出そうなんて考えてもいなかった。
一緒になってカツアゲをやることも、少年だけでなく不良たちの金をも巻き上げることも、
ましてや、助けてやろうなんて微塵も思っていない。
不良は頭を抱えて座り込む少年に容赦なく足を振り上げる。
「使えねぇ1年生なんてこの高校に要らね~!!」
「入学初日からお財布空っぽとかマジうける」
王生は不良たちが気付かない程度の距離を保ちながらその行為をボウっと見つめる。
――弱い存在なんて、意味がない。あぁ、つまらない。早く、早く「アイツ」に―――…
「空っぽなのは君たちの頭の中だよ」
ポツリと突然降ってきたその透き通る声に、
王生は、目を覚まし、鼓動を鳴らした。
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