アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Episode3 『眼鏡の花園くん』 ①
-
入学初日から新入生を狙ったカツアゲを処理し、霧間は長い桜並木の道から正門へと足を進める。
すると、後ろから誰かを必死に呼ぶ声がした。
「…ま、まって!!き、き霧間先輩っ…!スト―――ップッ…!!」
正確には、先ほどの争いが終わって霧間が歩き始めてから、その人物はずっと霧間を追いかけていた。
しかし、霧間はその呼びかけを淡々と無視し続けていた。
すると、やっと追いついた、と息を切らせながらその人物は霧間の前に回った。
その正体は、先ほど不良にカツアゲされていた眼鏡をかけた新入生の少年だった。
「なにか、用?」
霧間は、うんざりした様子もなければ特に表情を作らず、ただ、静かに少年を見つめる。
「先ほどは助けて頂き、誠にありがとうございましたっっ!!」
深々と頭を下げ、眼鏡少年は続ける。
「俺、今日入学したばかりの1年生、花岡 悟(はなおか さとる)って言います!」
花岡は、見るからに小柄で、弱そうだ。
しかし、こうしてカツアゲからの危機を救ってくれた霧間を追いかけて、深々と礼をする人間である。
礼儀正しく、真面目なことが窺える。
「君、あそこに居たんだ」
頭を下げる花岡に、霧間は花岡から目をそらし、冷たい言葉を言い放つ。
花岡は驚いたように顔を上げ、霧間の顔を見た。
しかしそれは一瞬のことで、次にはフッと柔らかく微笑えんだ。
「そうですか」
「………」
霧間はそれが気に食わなかったのか、花岡の横を通り過ぎようと足を進める。
「あ、あ!!ちょ、霧間先輩!」
無言で離れる霧間に花岡は焦ってまた追いかけようと態勢を直す。
すると、後ろをチラリと振り返った霧間が、一言。
「花園くんだっけ?君、もう入学式は始まってるんだけど」
「あ…」
その頃、入学式では校長の長い祝福の挨拶が丁度終わったところだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 47