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Episode5 『罠』 ①
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王生との組み打ちを終えた霧間は、中庭に出ていた。
すると
「き~り~まくん」
背後から馬鹿そうな声が霧間を呼び止める。
見ると、先ほど桜並木の下でカツアゲをしていた4人の不良がいた。
「クズは本当に学習しないみたいだね」
霧間はふぅ…とため息をついた。
「ん?」
4人の不良に隠れて見えなかったが、カツアゲには加わっていなかったガタイの良い男が一人姿を現す。
「よぉ、霧間ぁ」
霧間はその顔に見覚えがあった。
「随分と、姿を見ていなかったから尻尾巻いて逃げたのかと思ってたよ」
「村上」
村上と呼ばれた男はニヤァッと笑う。
「へぇ…。俺の名前、覚えていてくれたんだなぁ。嬉しいぜ。」
村上は、霧間が編入してきた時、いち早く霧間とやりやった男だ。
勿論、当時は霧間に敵う訳もなく、呆気なく試合は終了した。
その後も、何かと霧間に突っかかり、喧嘩を売っては返り討ちに遭っていたのだが
ある日を境にして突如村上は姿を消した。
噂では、ヤクザ連中と付き合っているなどと、あまり良い噂はなかったが、霧間は村上に関心を示すこともなく、寧ろ気が散る虫が居なくなって清々したと思っていた。
よっぽどしつこかったためか、霧間は村上の名前を覚えていたのだ。
その村上が、今目の前にいる。
「少し、雰囲気が変わったね」
霧間の知っている村上は、がたいは良く、拳に力もあったが喧嘩のやり方は単調なため、決して強くはなかった。
しかし、いくら霧間に負けても村上は起き上がり、目は死なない。
そのような態度を霧間は少しだけ気に入っていたのだ。
――だが
今、目の前にいる村上は、以前のような目で霧間を見ていない。
ただ静かに、
まるで欲情しているような、熱い視線を霧間を向けていた。
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