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Episode7 『偽言』 ⑥
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「霧間、一緒に逃げるぞ」
先程から予想外ばかりの村上の言動に、霧間は驚きを通り越して呆れた。
「また、冗談?」
“好きなんだ”
数十分前に、自分が霧間に言った告白が頭をよぎり、村上は少しうろたえた。
本当は伝える気なんてなかった。
でも、今までどうしても触れられなかった存在が、自分の手の中にあると自覚すると、抑えが利かなくなったのだ。
狼少年の気分はこんな感じか。と、不謹慎なことを考えながら村上は失笑する。
「…本気だ。お前はここにいると、いずれ組長にとっ捕まって永久に飼い慣らされることになるぞ」
霧間は村上の言葉に釈然としていなかった。
というのも、極道者が、公共施設である学校に再び姿を現すとは到底思えなかったからだ。
四か月前に漆戸組が高嶺桜高校に現れた際、様子に気付いた教師は当然警察に連絡を取っていた。
少なくとも、警察が到着したのは霧間、そして村上と漆戸組が去ってからだったが。
極道者も、警察が関わってくると面倒であることは確かだ。
ましてや、不良といえど、堅気の高校生に手を出したと知られれば、縄を打たれるのは目に見えている。
果たして、都内を占めるヤクザの一組である漆戸組が、そのような浅はかな行動に出るだろうか。
そしてもう一つ、霧間には強い意志があった。
「僕は捕まらない」
恐ろしいヤクザが、その浅はかな行動をしてでも手に入れたいモノが自分の高校に存在しているなど、この春入学した新入生は誰一人思ってもいないだろうに。
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