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涼
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全く稔の奴、寝込んでなんかくれちゃって。
良くなったらしっかり言って聞かせなくちゃ、ちゃんと休むのも仕事の内だよって。
あの子はちょっと頑張り過ぎる所があるからなぁ。
そんな事を考えながらスケジュールを確認する。
俺の担当の絹雲は、今夜は四朗さんが買い上げている。
お客が一人だけでまだ助かったよ、二人になるとバタバタするからね。
床の準備もちゃんとしたし、絹雲が言ってた四朗さんの好きなワインも冷やしてあるし。
お待たせするお詫びの軽食も、厨房に手配済みだから今頃運んでくれているだろう。
後は……うん、大丈夫。
頭の中で確認しながら、見世の入り口に向かう。
案内係の透に確認すると、もう応接間にお通ししたとの事だった。
「失礼致します」
一声掛けて襖を開ける。
応接間は洋間だから立ったままで済むのは有難い。
「四朗様、お待たせして申し訳ございません」
「かまいませんよ、そんなに待ちませんでしたし」
柔和な笑みで返される。
そもそも高級な遊び場である此処に来るお客はきちんとした人達が多いが、中でも名家の御子息だという四朗さんは従業員である俺達にさえ横柄な態度を取る事は無い。
俺が陰間だった時、一度お相手をしたが遊び方も綺麗なものだった。
「雲の間にご案内致します」
絹雲の為の接待部屋は離れにある。
離れは太夫の接待部屋だけの建物だ。
この見世の太夫は二枚看板と決まっているから二間だけ。
一番高い料金を取るだけあって、贅沢に遊べるようになっているのだ。
「大分涼しくなって来ましたね」
四朗さんが口を開く。
「ええ、左様でございますね」
「しかし驚きましたよ。貴方が突然引退なさるなんて、勿体無いですねぇ」
「ふふ、お上手ですね」
「本心ですよ」
「恐れ入ります。では、そう言う事に致しましょう」
「手厳しいですね」
一人に入れ込まない事でこの街では有名だった四朗さんが、絹雲一筋になったのは驚きだったけれど、この人が上客になって絹雲も嬉しいだろう。
まあ、太夫になれば気に入らないお客は振る事も出来るけれど。
どっちにしろ、可愛い絹雲を傷付けるような奴は俺が許さないし。
「どうぞ」
襖を開けて四朗さんをお通しする。
準備は整っている。
流石うちの厨房は優秀だ。
「本日は私が絹雲太夫を呼びに参ります。お待たせしてしまいますお詫びに、軽食をご用意させて頂きました」
「お気遣いありがとうございます」
「とんでもございません。失礼致します」
さあ、急いで絹雲を呼びに行かなくちゃ。
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