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竜也
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呼び出しメールが入って事務所に向かうと、不穏な空気を醸し出す望兄さんと青ざめた薄氷が居た。
「あらまぁ……薄氷、こんなに青ざめて可哀想に」
何をやらかしたのかしら。
同じ中途組としては、出来るだけ薄氷をかばってやりたい気持ちになるわ。
「竜也兄さん、望兄さんが怖いです」
よしよしと背中をさすって宥める間に、涼と透兄さんもやって来た。
これは只事じゃ無いわね。
「はぁ!?本物の四朗さん?」
「しっ!声が高いぞ涼」
望兄さんたら、時代劇にでも嵌まって居るのかしら。
何て現実逃避したいくらいややこしいわね。
本人にはツンツンして居るのに、何だかんだ絹雲に甘い涼は、大分怒って居るみたい。
「え、あのお客さん、そんな事を」
滅多な事じゃ狼狽えない肝の据わった透兄さんでさえ、戸惑って居るみたい。
「四朗さんと遊んだ事のない陰間と言われて、ちょっと変わってるなとは思ったんですが」
「あの人は此の街じゃ有名人だ。お客の要望に合う陰間を売り込むのもお前の仕事だ、無理も無ぇよ。落ち込むなよ、透?」
「はい」
見た目に反して男気のある望兄さんは、この見世を纏めるのに相応しいわね。
流石、庄之助さんに認められた男だわ。
「で、そいつはどんな見た目だったんだ?」
「何というか、こう、仇っぽい美人というか……なぁ、薄氷」
「仇っぽいだぁ?男なんだろ?」
とは言え、この事態にはピリピリして居るようね。
「でも、本当に下手な女の人より綺麗でしたよ」
望兄さんの剣幕に、私の腕の中で震える薄氷がとても可愛いらしい。
「何だお前ら二人して!おい、俺とどっちが綺麗なんだよ!」
「えっ、望兄さんそこ!?」
涼が思わず突っ込んでしまうのも分かるわ。
確かに望兄さんも美しいけれど。
「冗談に決まってんだろ」
止めて欲しいわ、こんな時に。
「陰間をやってるんじゃないかってくらい、綺麗な人でした……そうだ、首元に変わった形の痣があって」
「痣、なぁ」
「スミレの花みたいな……」
ん?
「ちょっと待って」
「おう、どうした竜也?」
「何か、引っ掛かるのよねぇ。何処かで聞いた様な……」
そう、魚の小骨が喉に引っ掛かった様な。
もう少しで思い出せそうなんだけど。
「おい薄氷、他に特徴憶えてねぇのか?」
「ええと、顔の割に上背が有って」
「それよ!」
「思い出したか!」
「寛さんが言ってたのよ、夏頃に、陰間と感違いされて何処の店か聞かれたって」
「あー、寛さんも綺麗な顔してるもんねぇ」
のんびりと涼が返す。
元来、彼はこの調子なのよね。
何も無ければ。
「確か、首元に痣が有る背の高い人って言ってたわ。仏頂面で愚痴ってたのよ」
渋い顔して、タバコ蒸しながらってのが似合わなくて憶えてたんだわ。
「よし、とりあえず厨房行くか」
望兄さんの鶴の一声で、あたし達は厨房に向かった。
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