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悩み、相談。
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今、この物語の舞台は2006年。
この国は、まだまだ同性愛に疎い。
厳しい、と、書くにはいささか違う。
おそらくは、それらの事に対して疎いだけなのだ
知識にしても、興味にしても、現実の事だという認識にしても。
貴仁は考えていた。
今、共に人生を歩む恋人は、どれだけ添い遂げる心持ちでいようと
生涯、恋人のままである。
そんな事は、龍希から言わせてみれば当たり前の事であって、そこに何を求めてもいなければ、そんな要らない被害者意識など持たないで歩みたいのだろうと思う。
ただ静かにそんな事には触れずにいておいてほしい。
そう思っている人が多いのも理解はしている。
けれども、貴仁は違う。
愛した相手を、生涯のパートナーを、この世の先でも守りたい。
この国が、家族として認めてくれる訳でもないと言う事は、互いに何が起ころうと、
遺族として何をしてくれる訳でもないと言う事だ。
保険は勿論自分の名義で、守ってくれるのもその名義である、自分だ。
自分達は、家族ですらなければ、パートナーだなんて言うのも、互いの口約束に過ぎない。
知っていてくれるのも、一部の龍希の知人達だけだ。
何の印も残せないのだから、無論、隣に居てあげられなくなれば、全ては終わるのだ。
そんなのは、嫌だった。
解っている、面倒くさい奴だし、考えすぎだし、余計なお世話だと言うのだろう
解っている。それでも、嫌だった。
だから、貴仁は考えた。考えて、考えて
幾度考えようと、やはり答えは1つしか出せなかった。
それはひどく身勝手な考えにも思えたし、
龍希を守る最善にも思えた。
どちらにせよ、それを龍希に伝える勇気がない。
そんな類いの思考だった。
誰かに相談をしよう。
では、誰にするのか?そんなものは、無論1つしか浮かばないのだ
「!!あら!やだ!珍しいお客様だわ!」
貴仁が選んだ相談相手が自分の店に現れた彼の姿に大袈裟にはしゃいだ。
そう、お分かりだろう。けんちゃんだ。
そして、はにかみ笑いをして会釈をする貴仁から、龍希と待ち合わせな訳でもないと告げられ、より驚きの声をあげた。
同時に、何かあったのかしら、と、感ずると
カウンター席へと、少し苦めの珈琲を差し出し、一言
「……準備中の札、出した方がいいかしら?」
と、ウインクをしてみせた。
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