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再会
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「龍希……。うん、ありがとう。でも伝えるの遅れた事は謝らせて。ごめん。」
貴仁が、自分の名前を呼んで居る。
自分に話しかけている。
香奈子が亡くなった。
死んだ。居なくなってしまった。
それでも、耳元に届く大好きな人の声に自分の胸が喜んでいる。
大好きな香奈子が亡くなったと聞いたのに。
脳が、心が、貴仁の声に幸福を覚えている。
頭がパニックで、息が荒くなった。
そして、たまにそれは詰まった。
貴仁が心配そうに、また自分の名を呼び、
その声が何か柔らかい綿のようになり耳元に鎮座した。
息をなんとか整えると、龍希は振り絞るように告げた。
「……明日。……そっちに行っても、いいですか?」
「え……?」
「香奈子さんに、手を合わさせて、ください。」
伝えると、少し驚いた貴仁は、
すぐに、とても嬉しそうに ありがとう と言ってくれた。
龍希は「そして、貴方に逢わせてください。」
と、続けたいその言葉を、勿論飲み込んだ。
…汚い気持ち。
そして、愛する気持ち。
ずっと、忘れる努力だけしてきた、本当の
押し込んだ本当の気持ち。
全てが溢れ出してきた。
長く、自分でつき続けてきた自分への嘘を、それは嘘なのだと、認めようとしていた。
そして、言った通りに翌日、龍希は貴仁の元へ訪れた。
久しぶりの再開は頭が真っ白で何も覚えていない。
貴仁の顔もまともに見なかったが、
あの頃から8年の歳を重ね36になった貴仁は、
少しゴツゴツとした輪郭に、無精髭がアクセントを付け、光の加減で茶色に映る濃い色の髪の毛は、こだわりなど無いかのように適当にサイドへ分けられており、
寝癖なのか、癖っ毛なのか、これもまた、こだわりも無いように所々と跳ねている。
決して一般的には容姿端麗とは言わずとも
それでも龍希には、
貴仁のその顔は、直視出来ない程に、
どんな有名芸能人なんかよりも、格好良く映ったのだった。
そして、変化は貴仁の目に映る龍希も同じであった。
やんちゃで、金髪の長めの髪を遊ばせていた高校生の頃の龍希までしか知らない貴仁に、
26になった龍希は大人で、
背などは自分に追い付くまでに伸び、
細身の長く伸びた脚が若さを物語り
少し薄めの茶色に見えるその髪は、
片方側だけを刈り上げたアシメントリーのスタイルになっていて。それはとても彼らしく映った。
無論、龍希のように「格好良く」や「ときめく相手」としては映らずとも、
覚えている龍希よりもずっと大人で、しっかりしていて、頼もしく。
弟のような扱いではない、幼なじみの友人として扱うべき相手だと映ったようだった。
そんな再開を果たしたら日から、度々貴仁の元へ通い始め、
数ヶ月後、1人暮らしをやめ実家へ戻った龍希は、今現在、殆どの日々を貴仁の家で過ごしている。
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