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香奈子と龍希
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この頃で、貴仁の元へ通い出して3ヶ月ほどが過ぎていた。
龍希の家はすぐ隣ではあるから、いつでも帰れるが、
何度か泊まっていたりもしている。
過去、高校生の龍希がした、
あの告白が正確な意味で理解されているとは思えなかったし、
勿論、あれから一度も龍希の想いなど伝えてもいないのだから、彼がゲイである事すら貴仁には解っていないだろう。
大好きだけれど告白すら出来ない相手を目の前に
供に食事をし、珈琲を飲み、笑いあう。
……辛くないかと言われたならば、
幾ばくかは辛かった。
縁側に座り、本当にあと数センチ。
ちょっとだけ手を動かしたのならば、
その手に、その指に触れられる。
近くても、こんなに遠い事が有るのだと知らしめられる気がした。
さらに辛かったのは
その「役割」である。
香奈子と同じ事をしている今、
どうしたって立場は
「龍希」でありながら、どこかで「香奈子」なのだと痛感せずに居られない瞬間は幾つも有った。
何かあれば
「香奈子は…」
と、言う事になるし、
その行いが彼女より良くとも悪くとも
必ず「香奈子よりも……」となるのだ。
そんな事は当たり前の事だと解っている。
龍希はただのお隣に住んでいた少年であり
彼女は恋人だった人なのだ。
龍希を恋人だと思っていたなら無論気を使うところだろうが、
ただの友人である1人の男を相手に、そんな気を使う理由などない。
当たり前で、わかりきっていて、
勿論覚悟もしていた事だったけれども、
それでもやはり、思っていたよりもそんな会話の機会は多く、
それは同時に思っていた以上に心に小さな傷を作った。
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