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無理
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それは、誰が決めた秩序であろうか?
何が有ろうと夜は更け、人は眠り、
朝がくれば鳥は囀り、人は目を覚ます。
やはりこれも神が定めた世界の流れなのだろうか?
───あぁ、そうだとしたなら、ついでに気まずさって感情も無くしておいてくれたならいいのに
龍希も、そして、貴仁も、
そんな事を考えながら、あれから半月という日々を流すように過ごしてきた。
───自分達は、今、恋人同士。なのだろうか?
2人して、全く同じような事を考えながら過ごした半月だったろう。
貴仁は、どうしたらいいのか解らない感情を。
龍希は、結局手を握る事さえままならない現状に、不安や苛立ちを感じながらの半月。
恋人だなんて、何をもってしてそうなるのかなど、どうしたならば解るのかと感じながらの、
長く、短い半月。
「……はぁ?何言ってんのよ、龍ちゃん」
ホイップクリームをたっぷりと…もとい、山盛りの更に山盛りに盛ったカフェラテをカウンター席に座っている龍希に出しながら呆れた声を出したのは、けんちゃんだ。
ここは、けんちゃんが経営するカフェである。
彼がこの口調、この容姿だからと言っていわゆる2丁目の、「ハッテン場」になっていると言う訳ではなく、
通常営業のごく一般的なカフェである。
とは言え、やはり店内にレインボーフラッグを置いたり、その類の雑誌を置いたりとしているため、
多くは同じセクマイの人々が集う店となっている。
それでもそれらは決して分かり易く飾る訳ではなかったため、
レインボーフラッグの意味合いを、一目では解らずに、その外観や内装の洒落た雰囲気にフラリと入店するストレートの人々は少なくは無い。
そして、どんな客にもけんちゃんは、隠す事無く、同じ口調で、自分はゲイなのよ、と公言し接客をするので、
初見で驚きはするものの、
その話しやすさに親しんだ客の中には、ここでLGBTの事へ理解を深めたと言う人も居る事だろう。
おそらくは、この洒落た外観や雰囲気も、
レインボーフラッグ関係なく、誰もが入りたくなるようにしていると言った所が大きいだろう。
「……あ!チョコ!!チョコソースかけてってば!あとナッツもー!!」
出されたカフェラテに文句を出したのは龍希である。
「……あんたねぇ!もうこれカフェラテなのかモカなのかわかんないじゃない!何なのよこのオリジナルメニュー!」
カフェラテにホイップクリームを山盛りの山盛りに、更にチョコソースをかけ、ナッツをふりかけるそれは、どうやらこの店には無い、龍希のオリジナルメニューのようだ。
眉間にシワを寄せ、これでもか!とチョコソースをかけながらけんちゃんは深く深くため息をつき、
間を開けると、勤めて冷静に口を開いた
「……で、龍ちゃん?さっき言った事、もう一度だけ言ってくれるかしら?」
「……えー。なんで…」
「なんで?!あーら!やだ!!なんでって?!
そうね!あんっっまりくだらない事だったもんだから、アタシの聞き間違いかしら?と思ってね!」
途中、返された龍希の反論を最後まで聞く事もなく、たたみかけるようにその反論への反論を伝えた。──否、浴びせかけた。ぐらいの言い方が正しいだろうか?
その勢いに、すっかり意気消沈した龍希が、無言でパクリとホイップクリームを口に入れる。
そして、渋々と再度言わされる台詞をけんちゃんへと述べた。
「……だからぁ、貴仁さんはさ、無理をしていると思う。だからさ、無理してまで恋人でなくたって、いいよって……その……」
そう、先に龍希がけんちゃんに伝えた相談とは、こういった事であった。
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