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壁
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それだからだろうか
龍希は、何だか至極素直に、
離れるなと言うその言葉を受け止められていた
ボロボロと泣いている龍希を、今にも泣きそうな顔の貴仁が覗き込む形となっているのだが、
その口が、「離れないでいて欲しいんだ。」と再び告げると、
龍希の頬に触れている手が僅かに震え出し、幾度も、幾度も、ごめん と、呟くのだった。
「……何で、謝るの」
震える貴仁の指先にそっと触れながら龍希は問いかける
この男の指が、震えながらも自分の頬へ触れている事、そして、繰り返される謝罪の言葉の意味が何なのか?
考えるのも怖い筈なのに、何故だろうか、今の龍希には自分にとって良い意味のような気がしていた。
それは、頬から伝わる温度の優しさが、
泣きそうでも決して反らすことのないその視線が、そうさせた。
その時、貴仁の瞳からいよいよ小さな涙の粒がポロリと落ちると、
その口が、告げたのだ。真っ直ぐと、はぐらかす事もなく
「……好きだよ。お前が大好きなんだ。」
そして、一旦言葉を途切ると、またすぐに続けた
「それなのに、俺は今まで、怖がって……ごめん。…俺は、……男を、さ。こんな風に好きになるのも初めてでっ……女性との時の感情と違って…なんて言うか、対等でさ……」
そこまで言うと再び言葉を途切り、「あ、いや、それは違うかな……」と弁解を口にして
龍希の頬においていた手を離すと、その視線も一旦逸らしてガシガシと頭をかいた。
上手く表現出来ない言葉を探しているようだった
「とにかくさ、俺は今までも女性を下に見た事なんて無いつもりだ、だけど、お前への想いを目の前にして、怖いくらい対等な奴を、愛していく自信が……解らなくて……俺っ……」
また途切られ、先刻まで真っ直ぐだった視線も逸らされたり、閉じられたりとする姿からは彼の緊張も焦りも伺えた。そして告白は再開される
「……何て言えばいいか解らないんだけど、愛するってさ、守るとか、一番に想うって事でさ……香奈子の事だってそりゃあ、対等に思っていたけど、お前はさ、それなんかよりずっと、本当に対等で……俺は、どんな風に好きになっていくのか、解らなすぎて、……怖かった……!」
強めの口調で吐き捨てるように言うと
唇を噛み締め、瞳からは涙がポロリと一粒だけ零れた。
「……だから、はっきりしなくて、ごめん。沢山我慢してくれるお前に、甘えてて、ごめん。
お前が何を感じるかなんて気にもしないで女性と会ってて、ごめん。
お前が必死で繋いだ手を、手離しそうになってしまって、ごめん。
でも、ハッキリした。龍希、お前が、好きだ。愛してるよ。」
ここまで言われて、龍希はようやく
この想いに、恋に、自信を持つことに成功した
あぁ、オレはちゃんとこの人に愛されてるのか。
マイノリティもマジョリティも知った事か
オレは、今、自分が好きだと思った人から、好きだと言って貰えている!
それは、自分の温度が全て変わるほどの大きな感情となって心を駆けめぐり、そして
自分への自信と変化する。
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