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愛してる
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再び触れられたその唇は、やはり女性のそれとは違っていて。
けれども震える龍希の唇は、貴仁を魅了するには充分だった。
離された唇が同時に持ってくるたどたどしさと居心地の悪さとは、何故こんなにも暖かだろう。
上手く目を合わせられない緊張感と、話せない格好悪さ。
何だ、相手が男でも女でも、恋のスタートは何も変わらない、同じではないか。
そう思うと貴仁は、ふっ。と笑ってしまうのだった。
可笑しくて。嬉しくて。
「何が、おかしいのさ……」
もう諦めていた相手が自ら口づけをしてくれた。
そんな奇跡で目の前がチカチカし、震えが止まらなくて、罪悪感も幸福感も押し寄せ、パニックになりかけた頭の龍希が、
泣きたいのか笑いたいのかも解らずぐちゃぐちゃの顔で尋ねてくる。
その顔ときたら困っているようで、怒っているようで、
耳まで赤くしているのだから
それこそ中学生の恋と同じかと思うと
貴仁は、あははっ!と吹き出してしまったが、それはすぐに自分への失笑へ変わる。
「……っ、ごめん、でも、何かさ、龍希も俺を好きで居てくれて、俺もこんなにお前を好きなはずなのに、俺は、何を、怖がっていたんだろうってさ。馬鹿だなって思ったら……情けなくて笑えてしまう……ほんと、情けないな……ごめん、」
そう言って笑うのを止めた、先程自分と口づけを交わした貴仁という相手は
無精髭に、寝癖付きの癖っ毛をまとめる気もない、決して男前とは言えない男で。
それでも龍希にとっては、どんな人気モデルやイケメン俳優よりも格好良く輝いていて、
そんな、最愛の相手が今度こそ、本当の本当に自分の恋人になってくれ、
今、その笑顔を自分へ注いでくれているのだと思うと、
やはりその目には涙が滲む
泣き方を忘れた男が見せる嬉し泣きは
2人を包む空気を優しく暖めた
愛とは、温度を感じられると言う事なのかもしれない。
触れた唇は熱を持ち
繋いだ手は温もりを与え
笑んだ口元は、優しさを伝える
縁側に並んで座ると、まるで限りなく無音になったような世界に心拍数だけを響かせる
「……遅くなって、ごめん。」
貴仁が言うと
「ううん、いいです、だって勢いや流れでなくて、沢山、悩んでくれた証拠だから。」
そして、龍希にとっては真新しく、貴仁にとっては懐かしい言葉を口にした
それは、「愛してる。」という世界で一番優美な言葉。
そしてその唇が再び互いを欲し、重ねられ、またすぐに離されると、
そこに互いを見つめ合う時間を作った。
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