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優しい仕掛け
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その一言は偉大で。
それは優しさだけに聞こえるが、命令に近い強引さも兼ね備えている
「おいで。」と言えば龍希が必ず来る事を知っていて発せられるからだ。
「来るよな?来いよ?」に近い命令のような力がそこには存在している。
しかし、その「おいで。」と発せられる語感と、
何より広げられる両手と、その笑顔は大きすぎる優しさに彩られて見えるのだ。
結果、その言葉に導かれる事は龍希にとっては、
感じた不安をその一時だけでも消して貰えるような安心感へと変わるのだった。
そして、もう1つ、呟かれる言葉があった。
「大丈夫だよ。」
その一言で、完全にそれらは確かな安心へと変化を遂げるのだ。
これは、人を信じる事を上手くこなせないで居ながらも、同時に信じてあげられない自分の性格を恨んでしまう龍希の心を、
せめてすこしの間だけでも紛らわせ、笑顔を与える為に貴仁が見つけた、
いわゆる「仕掛け」である。
言葉は悪いが、その「仕掛け」は確実に
龍希に見えていて、しかし壊す事の出来ずにいるマイノリティという大きな壁を少しずつ小さくしていくのだ。
そう、
言ってしまえば、優しい「仕掛け」である。
貴仁の温度に、優しさに触れれば龍希は必ずどんな時でも不安など忘れ、微笑みを持てた
それらは龍希には初めての事であり、
貴仁には小さな自信となるのだった。
不安は絶える事はない、
しかし、それでもこんなにも幸福な時間は有るだろうか?と龍希はいつも、その
「おいで。」と、「大丈夫だよ。」に優しく包まれるのであった。
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