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飛べない籠の中の鳥【榎月】*01
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「…ちなは、さん?」
太陽が沈み、部活で残った生徒たちの人影も消えた三年の教室が並ぶ廊下で、壁を伝って歩くちなはさんの様子に違和感を感じた私は、咄嗟に彼を呼び止めた。
「もう下校時間は、とっくに過ぎていますよ…」
ゆっくりと立ち止まった彼が、気まずそうな表情を浮かべて俯く。
「どうかしましたか?」
私の言葉にちなはさんは、小さく首を左右に振って
「…何でもない。」
そう、今にも消えそうな声で呟いた。
どうも様子が変だ。
掛けていた眼鏡を中指で押し上げる。
「何でもないって、そうは見えませんが…」
気遣うつもりで、ちなはさんの肩に手を置く。
すると…
「…っ!」
ビクンッと彼の身体が跳ね上がり
「す、済みません…」
それに驚いて、慌てて手を離した。
何だ、今の反応は…
逃げるように歩き出そうとする彼の手を思わず掴んだ。
「…ちょっと、待って下さい。」
やっぱり、何かが…
「は、離して…」
そう思うのと同時に力なく呻き、ちなはさんの足元がぐらつく。
その場に倒れそうな身体を受け止め、すっぽりと自分の腕の中に収まった彼の重みが、予想以上にない事に驚いた。
腕の中で身動ぎ、時折、喘いで荒い息を吐く。
身体が熱い。
「ちなはさん?大丈夫ですか?」
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