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飛べない籠の中の鳥【榎月】*05
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部屋の中に入ると綺麗に整頓され、男の部屋とは思えないくらい良い香りがしてくる。
一瞬、入る部屋を間違えたのかと思った。
ワンルームの狭さを感じさせず、壁にはきいやさんとの写真が飾られて、ベットには少し大きめのイルカのぬいぐるみが転がっている。
もしかして、きいやさんの好みだろうか?
適当に目に付いた場所に座らせて貰うと、少しして温かな煎茶が入った湯のみが静かに置かれた。
お供は、個別包装の醤油煎餅。
「何で煎茶なの?」
「さっき、きいやちゃんがお茶って…」
何だか、一瞬、祖母を思い出す。
「紅茶とか、コーヒーとか、会長サマの好みも聞かないで…」
「好きですよ、煎茶。」
ちなはさんのいれてくれたお茶をすすり、醤油煎餅を袋の中で割ってカケラを口に入れる。
「お煎餅も美味しいです。」
これは、本心だ。
「僕、お風呂に入ってくる…」
「ちょっと、ちなは。会長サマが来てるのに、後にしたら?」
ちなはさんが目だけできいやさんを見ると、聞こえない振りを決め込み、玄関先に姿を消した。
「ごめんなさい。あの子、帰ったらすぐにお風呂場直行が習慣で。」
さっきのちなはさんを見れば、その行動にも頷ける。
「あ、そうだ。晩ご飯まだよね?食べてく?」
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