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小さな一歩【ちなは】*09
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どうなってもいいと諦めていた僕に、手を差し伸べてくれる人がいる。
抜け出せないと思い込んでいた底なしの泥沼から這い出たいと、小さな勇気を胸に抱く。
「僕…」
「ん?」
野菜を洗う会長サマと、きいやちゃんが僕を振り返る。
「僕、もうあいつ等の言いなりになるのはやめる。怖いけど、ネズミだってネコに噛み付くんだから僕にだって出来るよね…」
「出来る!」
きいやちゃんの力強い言葉に、静かに頷く。
そして、遅めの夕飯をみんなで作って顔を見合わせた。
大丈夫。
二人がいれば、きっと。
羅川も、矢濱親子も、その取り巻きたちも、このまま許されてはいけない。
「小さな一歩ですね。」
「…面倒くさい奴で、ごめん。」
何であの時、会長サマと付き合いたいと思ったのか分かった気がする。
彼を味方にしたかったんだ。
どこかで、僕に勇気をくれる人だと気付いていたのかも知れない。
だから…
どうしても繋ぎ止める理由が欲しくて。
あんなに慌てたんだな、僕。
「会長サマ、明日は何がいい?」
「どんなのが好き?」
きいやちゃんがその話に飛び付いた。
「ひじき、きんぴら、千切り大根、筑前煮…」
「…好みがちなはと似てる。二人とも同じ歳とは思えない。若さがないよ、若さが。」
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