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神頼み/待ち人(11頁)
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帰り際に、おみくじを引いた。
百円を入れると、和風の音楽と共にガラスの中のミニ獅子舞が踊りだし、結果の紙を運んできてくれる――そんなからくりのおみくじ。
響は興味深そうにミニ獅子舞の踊りを見ていた。
肝心の結果は、
「なんだよ、あんま良いこと書いてないじゃん」
末吉だったらしい。
たいして読みもせず、ブーブー言いながら木に結びつけている。
俺はぼんやりしたまま獅子舞を眺め、小さな紙切れを開いた。
大吉、だった。
獅子舞からの皮肉のプレゼント。
喜びも虚しさも無く、無心のまま文字をたどった。
――“なにもかも上手くいく。だが用心しなければすべて破れる。”
「はあ」
これでは何も書いてないのと同じではないか。
なんてことを考えていると、ふと、ある部分で目が止まった。
――待ち人、遅れるが来る。
そうだろうか。
俺の待ち人はずっとそばにいて、でも手が届かないくらい遠くて……。
「龍広くん」
名を呼ばれ、ハッとした。
「なんか嫌なこと書いてあった?」
「別に」
おみくじをポケットにつっこむ。
――もう、手遅れだ。
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