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エターナというのは、ヘアメイクアップアーティストとしての兄さんの名前だ。
業界ではそこそこ売れているという。
メイクされた者は男でも女でもなくなり、エターナルな存在へと変貌する。――などと評価されているらしいのだが、俺にはサッパリ理解できない。
俺にとって、兄は兄でしかない。
「何しに来たんだ」
「ん? なんだと思いまちゅ?」
兄さんはアゴの前で指を立て、首を傾げた。トボけたような振る舞い。
腹立たしくて仕方がなくて、ギリギリと睨みつけてやる。
「ひゃーん、今日のたっちゅん怖いでちゅ!」
言葉とは裏腹にその反応一つ一つが嬉しそうだ。
このままではラチが明かないと、とりあえず部屋へ招き入れようとしたのだが、
「ねぇねぇ、これからご飯食べに行きまちょー! お兄たんがたっぷりおごりまちゅから!」
俺ではなく、響にむかって兄は言った。
「えっ、良いんですか!?」
響の表情がパッと明るくなった。給料日前で金欠なのかもしれない。――と、思ったところでほったらかしにしていたアイスが心配になった。
せっかく彼が買ってきてくれたものだ、ムダにはできない。
しかし、カップの中は既に空っぽだった。虚しくなるほど跡形もなくなっていた。
「やったあ! ちょうどお腹空いてたんですよぉ!」
その言葉。確かに嘘では無いようだ。
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