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「あっ。そういえば、たっちゅん。いま悩んでる事があるんでちょ?」
「――え?」
突然話題を変えられ、俺は反射的に兄を見てしまった。
「昨日、わざわざ相談に来たってケティに聞きまちたよ。お留守でごめんなちゃいねー!」
その澄んだ黒目に吸い込まれてしまいそうで。
心臓が、どきん、とした。
――今、ここで出してほしい話題ではないのに。
どう反応すればいいのか分からなくて、ぶっきらぼうに「別に」と返す。
すると兄はわざとらしく手を叩き、
「そっか! たっちゅんったら大学辞めたいんでちゅね!」
などと勝手な憶測を口にしていた。
「――エッ!?」
大きく反応していたのは俺ではなく響だった。弾かれたように顔を上げ、これでもかと目を見開いていた。
「そうでちゅよねぇ。志望校、選びたい放題で迷ってまちたもんね」
「……いや……、それ、はっ……」
それは違う。
だが、本当の悩みはここで言えるわけがない。
思わず響の顔を見てしまったが、彼は眉をひそめて不安げな表情をしていた。
明らかに言葉の先を待っている。
――このままではいけない。
慌てて嘘を考えるも、酒のせいで頭が回らなかった。
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