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口ごもっていると、余計に気まずい空気が流れ始めた。
兄は不思議そうにしながら枝豆をつまみ、響はケータイを置いてもしゃべりだそうとしない。
無言の空間の中、どうしたらいいのか分からなかった。
「とっ、友達が、……そのっ、……」
どうにかこうにかひねり出した言葉は、そんなことで。
「……で、できない」
いくらなんでも口から出まかせすぎる。
あまりの事態に、自分でも頭を抱えたくなったが、後には引けなかった。
「せ、せっかく、大学行ったのに、新しい出会いが無いとか、……寂しいって、思ってた、ところで……」
嘘だ。まるっきり嘘だ。
今の生活になって、一度だってそんなこと考えたことがない。
大学は高校のときのような人間付き合いをしなくていいのだ。一人でいることを許される空間、それが大学というもの。当たり障りのない付き合いで自分の時間を犠牲にする必要は無いのだ。
何より、俺は響以上の存在を求めていない。そんなもの必要無い。
「――あっ」
その響のケータイが再び震えた。今度は震えの間隔が長い。メールでなく着信のようだ。
彼は苦笑いするなり「ちょっとごめんね」と言って、席を外した。
その気配と足音が遠ざかると、兄は急にブフォっと噴き出した。
テーブルに突っ伏し、肩を震わせ始める。
「……へっ、ヘタ、……クソ……超ヘタ……へ、ヘタすぎっ……」
顔を真っ赤にしてヒーヒー笑っている。
なにがそんなにおかしい。
睨みつけてやるとさらに激しく笑う。我慢できず、その金色頭を一発引っ叩いてやろうと手を振り上げる。
「たっ、たっちゅんが、……ともっ、友達できない、なんて、そん……そんなことで悩むとか、あり得なさすぎっ……」
「――ぐっ」
兄は完全にお見通しだったらしい。
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