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卑屈弟/悩み事(34頁)
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「いやぁ、それにちても良い子でちゅね。響きゅんは」
笑いすぎの涙をぬぐいつつ、兄はしみじみとつぶやく。
俺はもう、耐えきれなかった。いつまでもからかわれては不愉快だ。
テーブルにグラスの底を強めにぶつけ、「いい加減、その喋り方やめろ」と、言い放ってやった。
「んー?」
兄は何を言われてるのか分からないという風に首を傾げ、トボけてみせる。
俺は分かっているのだ。
赤ちゃん言葉は“エターナ”のためのキャラに過ぎない。
「俺は“拓海兄さん”と話がしたいんだ」
本当の気持ちは、拓海兄さんにしか話せない。
絶対に。
「……やれやれ。しょうがないな」
ゆるゆるとした溜息と共に、元の拓海兄さんの口調が戻ってきた。
「って、あー! やっぱ照れるっ! 恥ずかしっ!」
俺からすれば赤ちゃん言葉のほうがよっぽど恥ずかしいが。
それでも「あー」とか「うー」とか唸りながら、心地悪そうに短い髪の毛をかきむしっている。俺の飲みかけの酒にまで手を出してきた。
「この頃さ、普通にしてる方が難しくなってきたんだよなー」
下戸の兄は、ほんの少し舐めるようにしてからグラスを置く。
それから、
「――で、ホントの悩みは?」
と、切り出してきた。
潤み、輝く目が俺を捉える。
「彼に関すること、だよね」
どうやら見透かされていたようだ。
「……なんで……分かった」
「そりゃあ分かるさ」
バカにするな、と言いたげに肩をすくめる。
「ぜんぜん目が違うからね。オレを見るときはピキーンとしてんのに、彼を見るときだけはてろてろにとろけてる」
「……意味分かんねぇ」
「そっか。無自覚か」
兄さんはまた俺の肩に手を回してきた。包み込むように優しく、ぽん、ぽん、と叩いてくる。
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