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偵察者/傍観者(43頁)
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俺は、昔、彼女の兄に憧れていた。
部活の先輩だった。
性悪の妹とは違い、優しくて面倒見が良くて、笑うと右頬にえくぼができる。魅力あふれる人だった。
今思えばあれが“初恋”だったのかもしれない。
異性でなく同性に惹かれることをハッキリと自覚させられた。
だがそんなこと、誰かに話せるわけがなかった。
ましてや同級生に知られるわけには――と密かに想っていた。
だが、尾津貴子はあっさりと見抜いたのである。
――「あんたすぐ顔に出んのね」
と、指摘された。
兄が男に好かれているというのに、嫌悪でもなく、軽蔑でもなく、ただ一人の傍観者として楽しんでいるようだった。
妹であるから当然、先輩のことをたくさん知っていた。
愛用パンツの模様、尻にあるホクロの位置、お気に入りのグラビア漫画雑誌、応援しているアイドル。おまけに、そっちのビデオの嗜好まで教えてきやがった。
爽やかな先輩のイメージが崩れていくさまに、嫌がりながらも、少し興奮したことを強烈に覚えている。
「あっ、兄が今どうしてるか知りたい?」
「別に」
嫌な予感がして回れ右した。
ヤツは容赦無く後を追いかけてくる。
「警察学校へ行って、結婚した。今度子供も生まれる。女の子だって」
「やめろ。興味無い」
「誤魔化してるけど期間的にデキ婚」
「お前なッ……!」
立ち止まり、睨みつけた。だが、彼女はゲスっぽい笑みを崩さない。
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