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すると響もハシを置き、手でホッケの骨を無理やり剥がしながら、
「たっくんさ、好きな人できた?」
などと問いかけてきた。
「――は?」
まったく予想していなかった言葉。思わず眉間にシワが寄る。
「この前の神社のご利益あったかなーと思って」
「別に」
「なにその言い方。どっちか分からないじゃん」
「どっちだっていいだろ。お前には――」
“関係無い”と続けようとしたが、心にもないことは口にできなかった。
「――そんなことより、……告白してきたヤツとはどうなったんだよ」
代わりに出てきたのはそんな言葉だった。
本当はこんなこと、自分から聞きたくはなかったのに。
「う、うまく、いってるのか?」
そのせいか、口が回らない。
まるで娘の恋愛事情にヤキモキする父親だ。頭を抱えたくなったが、どうにも言葉が見つからない。
響は「んー」っと唸り、首をかしげる。
「それがさあ、なんていうか……」
言いかけのまま彼は口ごもった。
どう続けたら良いのか分からず迷っているらしい。
その目が言葉の先を求め、うろうろと俺の胸元あたりを彷徨っている。
やがて、
「なんだか……、誰かの代わり、みたいなんだよね」
そう言い終えると深いため息をつき、目を閉じた。
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