アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
迷う口/誘う腕(56頁)
-
◆ ◆ ◆
――俺はどうすればよかったのだろう。
人けのない夜道を歩きながら、ごちゃごちゃした頭を抱えていた。
今になって「そんな女、捨てちまえ」と言えなかったことを悔やむ。
“親友”として、その権利はあったはずだ。
このまま無理に付き合ったところで、響が幸せになれるはずはないのだから。
だが、
――「その子の良いところ、たくさん知ってるし」
どうしてもあの言葉が引っかかる。
思い出す度、胸の底に冷たい痛みが走るほどに。
響は、自分自身ではなく、相手を幸せにしようとしているのだ。
なのに、俺は。
――響を独り占めしたい。
――ずっと俺だけを見てほしい。
――俺のためだけに笑ってほしい。
結局、自分のことしか考えていない。
バカみたいだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 387