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「なにするんだ、ケティ……!」
「あら。もうバレちゃった」
月明かりに照らされ、彼の髪は濡れたように光を帯びた。濁った血のような赤色。
「逢いたかったから待ち伏せしてたの。驚いた?」
その笑顔はまるで大輪の花が咲いたように美しい。
それでいてイタズラっぽくて。
なにより、優しげだった。
「お前な……」
だが、その腹の底に渦巻いているものがなんなのか、俺にはもう分かっていた。
ゆっくりと近づいてくる唇に、顔をそむける。
「やめてくれ。今日はそういう気分じゃない」
「前もそんなこと言いながら、結局逃げなかったくせに」
「っ!」
悔しく思いながらも、事実を前に否定はできなかった。
思わず奥歯を噛みしめる。
「あたしとするの、そんなに嫌?」
強張る頬を両手で包み込み、ケティはさらに微笑みかけてくる。
「それとも――、」
瞳の奥は少しずつ淀んでいく。
「他に抱かれたい男でもいるの?」
「はっ……!?」
「隠してもムダ。拓海から全部聞いたもの。その顔……、嘘じゃなかったみたいね」
ケティは、俺の唇の間に緑色の爪先を押し込み、
「恋なんて、するだけ損なのに」
冷たく吐き捨てた。
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