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「お前さ、なに読んでるんだよ……」
俺は本を閉じ、白々しく問いかける。すかさずのぞきこもうとしたが、
「にひひ」
響は俺の側に頬杖をつき、全集を隠した。
意味ありげに笑うだけ。
こっちを見もしない。
その頬に添えられた手の、骨ばった感じ。浮き出ている青い血管。
指は根元は太いのに、指先にかけてシュッと細い。
爪は卵型。手入れをしているのかというほどつやが良い。
本のことなんてどうでもよくなるくらい、目が、離せなかった。
ただ見ているだけなのに、触れているかのようにドキドキする。
何も知らぬ響は本に集中していた――ように見えたが、五分もしないうちにこっくり、こっくり、と舟を漕ぎ始める。
その手が、頬から外れ、机の上に落ちた。
やわらかな日差しが届く窓際、映画から流れてくる厳かな音楽、読めない漢字だらけの小説。
たしかに、この状況で眠くならないわけがない。
しかし、よく見てみると、うたた寝でなく爆睡モードに入ったようだ。
体からみるみるうちに力が抜け、大きく傾いた。今にも机ごとひっくり返りそうである。
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