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「んー……」
そのことを話すと、彼は珍しく長く考え込んだ。
うなりながら髪や唇やアゴの下を触り、言葉を探し回っていた。
しばらくして顔を上げたかと思えば、
「なんか、ボクさ、カノジョとか、まだいらないんだよね」
と、神妙な面持ちでつぶやいた。
そして俺の背中をポンポンと叩き、
「龍広くんがいれば、別にいいや」
そう笑ってくれた。
その表情に嘘はなかった。
――響は、俺だけを必要としている。
胸の奥底に秘めていた感情に、初めて光が当たった。そんな気がして。
つい、頬がゆるんだ。
俺も同じだ、響。
お前さえいてくれれば、もう、他にはなにもいらない――。
「あーあ。もうずーっとこのまま自習でいいのにねぇ!」
ずっとふたりだけで過ごしていけたら、どれほど幸せだろう。
「……そうだな」
けれども、その願いは叶わないだろうから――。
この一週間のことを、俺はずっとずっと――できるものなら永遠に――忘れないでいよう。
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