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「たっくん!」
彼がこちらを見つけるのに、そう時間はかからなかった。
「……っひ、び……き……」
嬉しそうに歩み寄ってくる姿に、俺は思わず、後ずさった。
「なんでここにいるの!?」
――今日ほど彼を見て悲しくなったことはない。
「どうしたの? なんか、顔色悪いね」
今すぐ逃げたかった。
「あ。分かった。二日酔いでしょ?」
なのに、体が動かなかった。
「ダメだよ。試験余裕だからって気ぃ抜いてちゃあ」
笑顔の彼はどんどん近づいてくる。
「いくらたっくんでも、油断してると絶対痛い目見るんだからね!」
気がつくと、その唇の動きばかり凝視していた。
明るい笑みをたたえながら、ハキハキとよく動く口。
――触れたい。
つややかで、やわらかそうなそこに、触れてみたい。
重ね合わせ、気の済むまでむさぼりたい。
――そうしたら、なにもかも忘れてしまえるのに。
「……ひ、びき」
「ん?」
俺はそっと彼の左肩を掴んだ。
身をかがめ、顔を寄せていく――。
「あ」
彼の口がパカリと丸く開いた。
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