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棘ノ道/波ト風(90頁)
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「今日のたっくん、なんか、いい匂いがする……」
彼は、とろんとした目でつぶやき、自らも身を寄せてきた。
「……すっごく、いい匂い……」
その言葉が、胸に深く突き刺さった。
急に呼吸が詰まり、締め付けられるような痛みで我へと返る。
――俺は一体、何をしているのだ。
今になって心臓の鼓動が強く激しくなる。
欲望に理性を奪われ、取り返しのつかぬ過ちを犯す寸前だった。
彼から慌てて手を離し、身を引こうとした――そのとき急に目の前が、ふっ、と白くかすんだ。
「――たっくんッ!」
次の瞬間、俺の体は響の腕の中にあった。
「ねぇ、大丈夫!? ねぇったら!」
自分では何が起きたのか分からなかった。
一瞬のうちに頭から血の気が引いて、意識まで遠のいたような――そんな気がした。
「もー、びっくりしたぁ」
力が抜けかけた俺の身体を、彼はしっかりと支えてくれている。
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