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波ト風/致命傷(94頁)
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「……俺、に……」
苦しくて苦しくて、楽になりたかった。
だから――、
「触るなっ!」
その手を冷たく振り払っていた。彼のやさしさを衝動的に拒んでしまった。
気づいたときには遅かった。
「……」
にこやかだった表情が一瞬にして凍り付くのを、見た。
数秒遅れで、猛烈な後悔が頭の中を駆け巡る。
慌てて謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、
「なんだよその言い方ッ!」
響は強く叫び返してきた。こちらの倍以上の声量で。
辺りの空気まで圧し払うような、あまりの気迫だった。
「酷いよ! ボクはたっくんのこと心配してるんだよ!?」
信じられなかった。
彼がこんなにも激しく言葉をぶつけてくることなんて、今まで一度もなかったから。
「とっても辛いこと、一人で抱え込んでるんじゃないかって、心配で……こうして……、なのに……なんだよ……」
返す言葉が無かった。
震えがとまらなかった。
彼が初めて声を荒げた理由が、よりによって俺のことだなんて。
信じたく、なかった。
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