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相談事/想う心(3頁)
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「……龍広くん?」
名前を呼ばれ、ハッとした。
息を吸った瞬間、ホコリが喉に絡み、激しく咳き込んでしまう。
「だ、大丈夫!?」
背中をさすられながら、泣きそうな気分になった。
たかをくくっていた。
完全に油断していた。
響には最悪の要素がひとつだけあるから――。
ファッションセンスがあまりにも独特すぎるのだ。
他人にどうみられようとお構いなし。その上、ド派手なものを好む。
ほったらかしておくとヒョウやトラ柄のTシャツを着たり、鳥除けみたいなキラキラを身にまとったり、全身を原色で統一したりする。
ついこの間は赤いハンチング帽に、真っ黄色のポロシャツ、グリーンジーンズというファッションであらわれた。
流石の俺も黙っていられず「信号機か!」とツッコミを入れずにはいられなかった。
そんなファッションモンスター・響である。
まさか告白するツワモノがあらわれるなんて。
「突然すぎてびっくりした?」
今日も今日とてウロコ模様の青シャツを着ている。お前は鯉のぼりか。高いところに吊り上げてやりたくなる。
こんな男を好いている女がいるのだ。
おぞましかった。
世も末だと思った。
もっとよく周りを見てみろと叱りつけたかった。
冗談じゃない。
響は、ずっと俺だけの――。
脳裏によぎった言葉を振り払い、ついでに背中をさすってくれた手も払った。
「それで何て答えたんだ?」
咳払いして気を取り直す。
本当は聞きたくもないのに、話をとめるわけにはいかない。
「んー、考えたけどよく分かんなくって」
その言葉に、少しホッとする。
「だから『ちょっと待って』って言ったんだけど、『待てない』って泣きそうな顔で言われちゃってさあ。まいっちゃって」
彼は依然として笑顔のままである。
青い青いの空の上、風にゆうゆうと舞う鯉のように――。
「まさか……お前……」
一方で、俺の中の雲ゆきは怪しくなった。
全身の血の気が引いていく。
嘘だ。
嘘だと言ってくれ。
「なんか可哀想だから、OKしたんだよね。一応」
その瞬間、脳天に雷が落ちた。一気に指先までしびれ、動けなくなる。
「へへへっ。そういうことです」
何も知らぬ響は頬を掻き、照れ臭そうにする。
俺は言葉に詰まった。
歯を食いしばり、震える両手を握りしめる。
「お前どうして、そんな大事なことを……、か、可哀想とか……、そういう、その場の感情だけで、決めるんだ」
あくまで冷静に冷静にと言い聞かせながら、頭の奥から取り出した言葉を声にしていく。
「だって龍広くんが相談に乗ってくれなかったから」
「まさか、お前……、昨日の電話は……」
「告白された後すぐかけたんだよ」
「バカがっ!」
気がつくと大声で怒鳴っていた。
食堂全体に一瞬、静寂が走る。女子共が振り返って、何事かとヒソヒソと話している。
それも数秒後には元に戻っていたが、知ってしまった現実は凍りついたままだ。
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