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◆ ◆ ◆
「ホント……、階段、凄すぎぃ、……疲れたぁ……」
本殿へと続く、猛烈な石段。
息を切らせ、手すりにつかまりながらのぼる響は早くもヘロヘロだ。
四階建ての大学でもエレベーターを使ってきた報いだろう。
曲がりくねった石段は、四階どころか六階相当はあるだろう。のぼってものぼっても頂上は見えない。
「なんでこんな高台にあんのぉ?」
「俺に聞いてどうする」
「あーあっ! もー、やだっ!」
弱音ばかり吐いているが、諦めるつもりは無いらしい。
自棄のように強く踏み出す足は一度も止まらなかった。
いやでもなんでも上に行かなければ来た意味がないからか。
何をそんなに必死なのだろう。
俺は彼より少し早くのぼり、立ち止まって振り返った。
へろへろと追いついてきたら、また先にのぼる。
振り返る。
それを何度か繰り返した。
なんだか遭難者を導く登山犬みたいだった。
やっと頂上に着いたとき、響は疲労困憊。倒れそうなほどつんのめり、呼吸を整える。
「やばっ……、ボク、すげー、運動不足っ……!」
「今さら気づいたか」
俺も少し息が切れたが、彼ほどではない。中学時代に陸上部で鍛えた体力はどうにか健在のようである。
「でもさぁ、なんかさあ、頑張ってのぼった分さ、ご利益が、……たっぷりある、気がする、よね」
絶え絶えの息の中、彼はいつものようにへらへらと笑った。
「これって、神様なりの、演出、なのかも……」
それはそうかもしれない。
口にこそ出さなかったが、俺は妙に納得してしまった。
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