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譲の高校卒業式 5
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「今日は卒業おめでとう」
隼人は、ひと気のない、街灯の明かりが静かに照らす住宅街の道で、そっと俺の肩を抱いた。
さっきまで、全身で触れ合っていた熱い身体が、まだ火照ったままで、苦しかった。
離れ難かった。
もっと、いっしょにいたかった。
別れるのは、つらかった。
胸の奥から隼人の胸に糸がつながっているような切なさを感じた。
「離れたくない」
俺の片目から涙がこぼれた。
バカな。女の子じゃあるまいし。
恋人と別れ際に泣くなんて。
すぐ会えるじゃないか。
そう思って、心を鎮めようとした。
それなのに甘えたような気持ちが、俺の唇を震わせて、それ以上、何も言えなかった。
塀の向こうに紅梅が咲いていた。
春の夜の闇はあやなし恋う人の色こそ見えね香やは隠るる。
隠せないのだ。
俺の気持ちは。
俺たちの関係も。
こうしていても誰か人に見られたらいけない。
けれど抑えようとしてもあふれてくる想いが、互いの思慕の情が、俺たちを春の夜の闇に立ち尽くさせていた。
俺は、別れを告げる隼人の声を聞くのが怖かった。
「また連絡するから」
隼人は、ついに口を開き俺の肩から手を離した。
そのまま連絡は途絶えた。
それから二年二ヶ月何の連絡もなかった。
何度もこちらから連絡したけれど電話も何も通じず応答もなかった。
俺は、隼人と過ごすつもりで春休みの予定を入れていなかった。
俺は、やり場のないいらいらする気持ちと、中途半端に掻き立てられた欲望がおさまらず、卒業したのに、高校の道場に顔を出して発散させた。
それでも気持ちがおさまらず、その後、洋講堂書店に行って、コウに話しを聞いてもらった。
話しながら、興奮してしまった俺は、コウと深い仲になった。
コウの口淫は上手かった。
ぴちゃぴちゃと獣が傷を舐めるような、あるいは屍肉をあさるような音が、淫靡に哀しげに響いた。
生あたたたかい口の中の感触。
長い黒髪で綺麗な顔のコウが、上目づかいで、舐めている姿にゾクゾクした。
洋講堂の二階での、甘く密かな関係は、俺の心の痛手をじょじょに慰めていった。
洋輔にとがめられるまでは。
コウは、少しサディスティックな俺のセックスを喜んだ。
じょじょに歯止めが効かなくなって、最近では、少しどころではなくなっていたが。
俺は、隼人に捨てられて、前よりいっそう嗜虐的になったのだった。
隼人の家に電話しても、友達や親らしき人が出ると電話を切られてしまったり、留守だと言われて取り次いでもらえなかった。
一度だけ、隼人が出て、俺は嬉しくて泣きそうになったことがある。
なのに隼人は、あの時は、意思が弱くて、流されただけ、どうか、忘れてほしい、と言った。
俺は、食い下がったが電話を切られ、絶望した。
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