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潤と譲「倫子の病室」
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譲は、ドアのところまで潤を引きずっていった。
ドアの前で潤は頭をそらして言った。
「殴られても黙らないね」
譲は、気圧されたように黙った。
「俺は、言いたいことがあるんだから、それを言うまでは黙らない」
「刃物とか、持ってないだろうな?」
譲は、小さい声で潤に尋ねた。
「そういう危険さはないよ。俺が言ってる俺の危なさは、俺は譲みたいに倫子さんの息子じゃないってこと」
「言うなよ。お前の言いたいことはわかるから」
「何? なんだと思うの?」
「お前のオイディプス神話につき合うつもりはない。俺は、断固阻止する」
「邪魔するなよ」
「言うな。言ったら殴る」
「殴られても言うって言ってるじゃないか」
「だったら自分の意志で、言うのをやめろ」
「いやだ」
「言わせない」
「言いたい」
「言わせない」
「どうして?」
「お前、親父に騙されてるんだよ。よく、不倫する男が『妻との関係は冷え切っている。俺は孤独だ。誰も慰めてくれる人がいない。君が好きだ。妻とは別れるつもりだ』と女に言うのといっしょだ。おおかた、親父は潤にそんなことを言ってるんだろう?」
潤の胸は、ちくりと痛んだ。
確かにそうかもしれない。
自分は、叔父に騙されているのかもしれない。
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