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潤と譲と夏目「傷害VS強制猥褻」
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総合病院の病棟の廊下を歩きながら、潤は、長兄と、長兄の恋人である医師に、からかい半分で尋ねた。
「それもこれもみんな、譲兄さんのせいなんでしょう?」
すると兄の恋人の夏目が、うろたえて、あわてて譲をかばうように答えた。
「そんなことないよ。僕も悪いんだ。昨日話せばよかったよね。大事なことなのに。もう、知っているのかと思い込んでいて」
譲も、競うように夏目をかばった。
「いや、俺のせいだよ。俺、隼人に夢中になってて」
潤は、苦笑した。
「みんな、ひどいなあ」
兄の譲は、シビアに叔父のことを言った。
「おっさんは、自業自得なんだよ。だいたい、あの怪我だってさ」
偶然にも叔父の担当医であるという夏目が、思い出したように言った。
「あ、そのことも、聞きたかったんだ。なぜ、刺し傷をつくるようなことに?」
夏目は、途中から、あたりをはばかるように、声をひそめ、同時に眉をひそめた。
譲が、たいして隠すようなそぶりもせずに、あっけらかんと答えた。
「潤が、刺したんだよ。傷害罪で少年院に突っ込まれるところなのを、俺がかばってやってるんだから」
「家族だから、傷害罪とかならないんじゃないの?」
潤が希望的に述べた。
「なるよ」
譲にあっさり返された。
「じゃあ、譲や叔父様は、強制わいせつ罪だね。でも、起訴されてないよね」
潤は、切り返した。
「訴えれば? 証明できないけどな」
譲がニヤッと笑って、憎たらしい言い方をしたので、潤は、ムッとした。
「証明できるよ。ビデオとか写真あるでしょ」
瑤が言っていた。
「潤、本気かよ?」
譲が、嘘だろう? と言うように、いつもと違う独立的な潤の言動に、怪訝そうな顔をした。
「でもね、自分の保護者や、家族を訴えるのは、気が重いよ」
潤自身も、抑圧されていた感情に向き合うのは、しんどかった。
このまま、抑圧していた方がまし。
その方が楽。
抑圧されている感情なんてろくなものじゃない。
だからこそ抑圧されているんだから。
などと思ってしまうのだった。
「まじかよ」
譲が、今までと違う潤の態度に、驚いたようにのけぞった。
「まあ、せいぜい、俺の機嫌をとっておいたほうがいいよ」
潤は、不遜にも、にやりと兄に笑い返してやった。
「ジュン君がっていうのは、事実なの? 大洗さんも、そんな風に言っていたけれど、どういうことなのか、理解できなくて」
夏目が口をはさんだが、彼もまた、違った意味で、戸惑っているようだった。
「潤の反抗期が激しすぎてこわいよ。今度は、俺が刺される番かも」
譲は、お手上げだというような仕草をしてみせた。
「俺、さっき、譲兄さんに恋路を邪魔されて、気が立ってるんだよね。俺も、人の恋路邪魔しようかな」
潤は、フツーの、そんじょそこらの発達の過程みたいに、十把一からげみたいに、上から目線で客観的に言われたことにむかついた潤は、イラついたので兄に言ってやった。
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